人工関節の名医
直江高行先生 
医療法人徳洲会 野田総合病院

常磐道柏インターより車で約20分、千葉県野田市横内にある「野田総合病院」。人工関節・膝関節鏡スポーツセンター長を務める、直江高行(なおえたかゆき)先生は膝や股関節の治療、とくに「人工関節置換術」を専門とするドクターです。「手術はオーダーメイドであるべき」という信念のもと、一人ひとりの患者さまに合わせた、緻密でパーソナライズされた手術を追求しています。直江先生に、医師を志したきっかけや、人工関節治療にかける熱い思いについて、詳しくお話を伺いました。

父の死、そして自らの怪我。二つの体験が導いた整形外科の道

____先生が医師を目指されたきっかけについて教えていただけますか?

直江高行先生小学生の時、父を肝臓の病気で亡くしたことが最初のきっかけです。命に関わる仕事に就きたいと考えるようになりました。

____なぜ整形外科の道を選ばれたのでしょうか?

直江高行先生当初は、父のこともあり直接命に関わる科が良いと、心臓外科や消化器外科を考えていました。しかし、大学4年生の時、真剣に打ち込んでいたブレイクダンスの練習中に右膝を怪我してしまい、半月板損傷の診断で手術を受けることになったのです。幸い手術は成功し、その後も無事にダンスを続けることができました。この患者としての経験が、私の進む道を大きく変えました。命を直接救うことも尊い医療です。しかし怪我や病気で損なわれた身体の機能を取り戻し、患者さまが元の生活や、やりたかったことに復帰できるよう手助けする整形外科の重要性と魅力に、身をもって気づかされました。

____先生にとって、整形外科は天職だと感じますか?

直江高行先生心からそう思います。整形外科の病棟は、患者さまが基本的に明るい方が多いですし、手術自体も3Dや立体を掴む感覚・イメージが、自身に非常に合っていると感じます。幸い術後経過の良い患者さまが多く、治療によって元気になっていく姿を間近で見られることは、何物にも代えがたい喜びです。もしもう一度生まれ変わることがあっても、また整形外科医の道を選ぶでしょう。それほど、この仕事に満足し、誇りを持って取り組んでいます。

一人ひとりに合わせた、究極の人工膝・股関節置換術

____先生が特に力を入れている「人工膝・股関節置換術」について詳しく教えていただけますか?

直江高行先生人工膝・股関節置換術*1は、変形性関節症などが末期まで進行し、すり減ってしまった関節の表面を、金属やポリエチレンなどでできた人工関節(インプラント)に置き換える手術です。痛みの原因を根本から取り除くことで、歩行能力を劇的に改善させることが可能です。私の手術における最大のこだわりは、「オーダーメイド治療」を徹底することです。同じ病名であっても、患者さまの骨の形、靭帯のバランス、生活背景、そして術後にどのような関節を目指したいかは、一人ひとり全く異なります。

患者さまの膝・股関節の状態を詳細に分析し、術後の生活までを見据えて、使用するインプラントの種類やサイズ、設置する角度、靭帯のバランスなどを、ミリ単位で調整していきます。患者さまにとって、痛みがなく、自然で、長持ちする関節をいかにして作るか。それを常に考えながら、魂を込めて手術に臨んでいますね。

____海外でのご経験も、そのスタイルに影響を与えているのでしょうか?

直江高行先生アメリカやヨーロッパで留学し、最先端の手術を見学・研修する機会に恵まれました。海外では、人工関節の手術を日帰りで受ける患者さまもいるほど、低侵襲な技術が進んでいます。日本の医療制度では日帰りは難しいですが、そのレベルを目指せるほどのクオリティを、日本の患者さまにも提供したい。その思いで、常に日々技術や研究の研鑽に励んでいます。

術前診断からリハビリまで。チームで支える、納得の治療プロセス

____実際に人工膝・股関節置換術を受ける場合、どのような流れになりますか?

直江高行先生まず、外来で診察させていただき、お薬や関節内注射、リハビリテーションといった、手術以外の「保存療法」から治療を開始します。手術は、あくまで最終手段の一つですね。保存療法で症状が改善しない場合、初めて手術を検討します。手術が決まったら、レントゲンやCTなどで詳細な検査を行い、患者さまに合わせた「オーダーメイド」の治療計画を立てていきます。

手術は、患者さまの身体への負担を最小限に抑えるアプローチで行います。術後に行うのは、専門の理学療法士によるリハビリテーションです。手術は、あくまで機能回復のスタートライン。術後、半年から一年ほどかけて、私たち医療チームと患者さまが一緒になって、理想の関節の状態を「作っていく」感覚で、リハビリをサポートさせていただきます。

年齢を理由に諦めないで。もう一度、アクティブな毎日を

____診察を行う上で、先生が最も大切にされていることは何でしょうか?

直江高行先生患者さまとの信頼関係です。とくに人工関節のような大きな手術を受けるにあたっては、多くの不安があると思います。そうしたお気持ちにできる限り寄り添い、リスクも含めて、全ての情報を正直にお伝えし、一緒に不安を解消していく。そのプロセスを何よりも大切にしています。

年齢や、「両膝・両股関節同時は大変だろう」といった思い込みから、治療を諦めてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。現代の医療技術は、そうしたハードルを乗り越えることが期待できます。

____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。

直江高行先生膝や股関節の痛みで、旅行や趣味、スポーツなど、やりたいことを諦めてしまってはいませんか。手術はもちろん、リハビリテーションや投薬治療など、その痛みを和らげる方法は、たくさんあります。もし手術が必要になった場合でも、その後のリハビリまで含めて、私たちが責任を持ってサポートします。ご高齢の方からスポーツに励む若い方まで、関節の痛みにお悩みでしたら、どうか諦めずに、まずはお気軽に、私たちにご相談ください。

プロフィール
直江高行先生
<プロフィール>

医療法人徳洲会 野田総合病院/副部長 人工関節・膝関節鏡スポーツセンター長 直江 高行(なおえ たかゆき) 日本大学医学部卒業後、東京大学病院、人工関節・膝スポーツセンターを経て、アメリカやヨーロッパ、アジア各国での留学経験を基に、膝・股・肩の人工関節全般、靱帯損傷等の膝スポーツ疾患、初期変形性関節症に対する骨切り手術等を行う。野田総合病院の人工関節/膝関節鏡スポーツセンター長として赴任し、現在に至る。

<所属学会>
日本整形外科学会
日本人工関節学会
日本膝関節学会
日本股関節学会
日本リハビリテーション医学会

<資格>
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本リハビリテーション医学会急性期リハビリテーション管理認定医
リバース型人工肩関節置換術認定医
日本体育協会公式スポーツドクター
AO trauma Basic&Advanced Principles Course 終了
日本外科学会 JATEC Course終了
日本救急医学会 BLS Course終了
日本救急医学会 ICLS Course終了
日本救急医学会 ACLS Course終了
日本救急医学会 PALS Course終了

問い合わせ: 04-7124-6666

治療メニュー等

取材日: 2025年8月18日

*1
◾️施術名:人工膝・股関節置換術
◾️施術の説明:変形性関節症や関節リウマチなどによって、すり減ったり、変形したりした関節の表面を取り除き、金属やポリエチレンなどでできた人工の関節(インプラント)に置き換える手術。痛みの原因を根本から取り除くことで、日常生活における歩行能力の大幅な改善が期待できる。当院では、患者一人ひとりの骨の形や症状、ライフスタイルに合わせて、インプラントの種類や設置角度などを最適化する「オーダーメイド治療」を実践している。
◾️施術のリスク:
感染、輸血、脱臼 等ありますが自験例ではいずれもありません。
◾️費用
本手術は、健康保険適用の治療となります。費用は、個々の症状や治療内容、保険の負担割合によって異なりますので、診察の際にご確認ください。


ライタープロフィール
今崎人実
大手インターネットプロバイダーを経て、Webデザイン事務所に所属。Webデザイナーとして医療専門サイトの構築に携わる。2021年に専業のライターに転身し取材を中心に活動。医師・看護師・放射線治療の研究所などへの取材を得意とし、ライターとして活躍中。