東京都杉並区・上井草。西武新宿線の閑静な住宅街の中に、腫瘍(がん)と消化器の専門診療を柱に掲げ、地域のホームドクターとして多くの飼い主と動物たちから頼りにされている動物病院があります。「オリバーどうぶつ病院」。 院長の和田貴仁先生は、東京大学附属動物医療センターでの研修医課程を経て、日本大学獣医外科学研究室での研究にも携わるなど、大学病院で10数年にわたり内科から外科まで幅広い臨床経験を積んできました。日本動物病院協会(JAHA)の外科認定医、日本獣医がん学会の腫瘍科認定医という二つの専門資格を持ち、学会報告や論文発表も精力的に行うアカデミックな一面を持ちながら、その診療の軸にあるのは「飼い主さまと動物たちのライフスタイルに合った、心のこもった医療」という温かな信念です。 今回は和田先生に、獣医師としてのルーツや、専門とする腫瘍外科の診療について、そして飼い主様と動物に寄り添う治療哲学について、詳しくお話を伺いました。
おばあちゃんの愛犬が教えてくれた、「命を助ける仕事」への想い

____まずは、先生が獣医師を目指されたきっかけについて教えていただけますか?
和田貴仁先生私が獣医師を目指したきっかけは、幼少期の体験にあります。祖母が飼っていたダックスフンドが病気になり、動物病院で治療を受けている姿を間近で見ていました。幼いながらも、病気と闘う小さな命と、それを懸命に支える獣医師の姿に心を動かされ、「自分も動物を助けられる人になりたい」と強く思ったことが、この道を志した出発点です。
____大学卒業後は、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?
和田貴仁先生酪農学園大学獣医学科を卒業した後、東京大学附属動物医療センターで内科系の研修医、さらに上級研修医課程を修了しました。その後、日本大学の獣医外科学研究室で研究協力員としても活動し、大学病院の環境で10数年にわたり、内科診療から外科手術まで幅広い症例を経験してきました。
____その中で、特に腫瘍と外科を専門にされた理由はありますか?
和田貴仁先生大学病院では内科も外科もすべて網羅して診療してきましたが、その中で特に力を入れてきたのが腫瘍の診療、とりわけ外科手術の分野です。腫瘍は一口に言ってもサイズや形、発生する場所が一頭一頭まったく異なります。2kgの超小型犬から40〜50kgの大型犬まで、体格差も大きい。その難しさに真剣に向き合い続けてきたからこそ、専門としての技術と知識が培われたのだと感じています。現在は、日本動物病院協会(JAHA)の外科認定医と、日本獣医がん学会の腫瘍科認定医を取得し、腫瘍外科*1を専門として診療にあたっています。
「今の医療が正しいとは限らない」。学び続ける姿勢と、エビデンスへの誠実さ

____先生は学会報告や論文発表も非常に多くされていますが、日々の知識のアップデートについてはどのようにお考えですか?
和田貴仁先生動物医療も人間の医療と同じで、情報はどんどんアップデートされていきます。ですから、現状の医療に満足してはいけないと考えています。今「正しい」とされるエビデンスに基づいて治療を行っていても、治らないケース、原因がわからないケースは多々あります。
____その経験を学会や論文で発信されているのですね。
和田貴仁先生はい。自分の症例を学会や論文で報告することで、さまざまな先生方から意見をいただけます。「今の医療が正しいわけじゃないよね」ということを客観的に確認でき、日々の診療を刷新していくきっかけになる。知識のインプットだけでなく、アウトプットも行うことで、常に最善の医療を模索し続けるという姿勢を大切にしています。
一頭一頭が違う。だからこそ、細心の注意を払う腫瘍外科

____先生が専門とされている腫瘍外科について、詳しく教えていただけますか?
和田貴仁先生腫瘍外科*1とは、体にできた腫瘍(がん)を外科的に切除する治療です。当院では、体表にできる腫瘍から、腹腔内の臓器に発生する腫瘍まで、幅広い症例に対応しています。
____動物の手術は、人間と比べてどのような難しさがありますか?
和田貴仁先生人間であれば体格はおおよそ同じですが、動物は2kgの子もいれば40〜50kgの子もいます。腫瘍のサイズや形もさまざまで、発生する場所が手術の難易度を大きく左右する場合もあります。同じ病名であっても一頭一頭まったく状況が異なりますので、細心の注意を払いながら、その子に合った手術プランを立てていきます。
____腫瘍の診療では、手術以外のアプローチもあるのでしょうか?
和田貴仁先生はい。当院では腫瘍外科手術*1だけでなく、抗がん剤治療も含めた腫瘍科全般の診療を行っています。また、消化器の専門診療として内視鏡検査にも対応しています。手術が最善の選択なのか、内科的な治療を組み合わせるべきなのか、総合的に判断した上で治療方針をご提案しています。
飼い主様の意向と動物の状態、双方を見極める診療の流れ

____実際にオリバーどうぶつ病院で腫瘍の診療を受ける場合、どのような流れになりますか?
和田貴仁先生まずは、飼い主様から詳しくお話を伺うことから始めます。いつ頃からどのような症状が見られたのか、普段の様子はどうかなど、丁寧にヒアリングを行います。その上で、触診や血液検査、画像検査(レントゲン・超音波検査など)を実施し、腫瘍の位置や大きさ、性質を詳しく調べていきます。
____検査の後は、どのように治療方針を決めていくのでしょうか?
和田貴仁先生検査結果をもとに、外科手術が適切なのか、抗がん剤などの内科治療を行うべきなのか、あるいは組み合わせるべきなのかを総合的に判断し、治療の選択肢をご説明します。ここで非常に大切にしているのが、飼い主様との「すり合わせ」です。
____飼い主様との「すり合わせ」とは、具体的にどのようなことでしょうか?
和田貴仁先生医学的に「正しい」とされる治療が、必ずしも飼い主様と動物にとって幸せな選択とは限りません。治療の負荷が強すぎて、動物が苦しい思いをしてしまうケースもあります。ですから、「あまり苦しませたくない」という方から「できることは何でもやってほしい」という方まで、お一人お一人のご意向を丁寧に伺い、飼い主様が選ぼうとしている治療と、医学的に見込める効果に大きなズレがあるようであれば、「現状ではこの治療法でこれくらいの効果が期待できます」といった形で情報をお伝えし、一緒に最善の道を探していきます。手術を行う場合は、術前の検査、手術、そして術後の経過観察やフォローアップまで一貫してサポートいたします。
最新の医療を、一人ひとりに「カスタマイズ」して届ける

____先生が診療で最も大切にされていることは何でしょうか?
和田貴仁先生私の中で一番大切にしているのは、飼い主さんと動物が健康に、幸せに過ごしていただけるということを軸に治療を考えるということです。最新の治療法をインプットすることはもちろん重要ですが、それをアウトプットする際には、飼い主様お一人お一人の状況に合わせて「カスタマイズ」して提供することを心がけています。
____動物の場合、患者さん本人と飼い主様という二つの立場がある点も、難しさの一つですね。
和田貴仁先生その通りです。人間の医療であれば、患者さん本人が治療を選択できますが、動物医療では「具合が悪い本人(動物)」と「判断する飼い主様」が別の立場にいます。一番長い時間を一緒に過ごし、お家での様子を見ているのは飼い主様ですから、そのお気持ちやご意向を大切にしつつ、動物の状態と照らし合わせて、双方にとって最善の提案をしていくことが私の役割だと考えています。
____最後に、この記事をお読みの飼い主様へメッセージをお願いします。
和田貴仁先生大切な家族である動物たちの体に「しこり」や「できもの」を見つけたとき、あるいは「なんだか元気がない」と感じたとき、不安な気持ちでいっぱいになると思います。でも、早期に発見し、適切な診断と治療を行うことで、良い結果に繋がるケースはたくさんあります。当院では、腫瘍や消化器の専門的な知識と技術を活かしながら、飼い主様のお気持ちに寄り添った診療を行っています。「こんなこと聞いていいのかな」ということでも、どうぞ気軽にご相談ください。飼い主様と動物たちが安心して毎日を過ごせるよう、全力でサポートいたします。
