愛する動物に残された時間を、最も幸せな日々に変えたい。そんな想いを原点に、西洋医学と東洋医学を組み合わせたホリスティックケアで、飼い主さまと動物の毎日に伴走するのが、獣医師歴23年・猫の飼い主歴30年の西田しのぶ先生です。子どもの頃にムツゴロウさんに憧れて獣医の道を志し、多くの命と向き合ってきた西田先生は、「世界で一番の町医者でありたい」という信念のもと、ご家族にとって「幸せの方角」を指し示すコンパスのような存在であり続けることを目指しています。さらに、愛猫のためのケアと相談のサイト「mewlogue」、愛犬のためのケアと相談のサイト「wanlogue」を個人活動として立ち上げ、LINEやZoomによるきめ細やかな伴走と、近郊地域での訪問ケアを通じて、「最期まで幸せな時間」を静かに支える場づくりに力を注いでいます。西田先生に、獣医師を志した原点や、ホリスティックケアという診療スタイル、そしてmewlogue・wanlogueに込めた思いについて、詳しくお話を伺いました。
ムツゴロウさんへの憧れが原点。動物を理解したくて獣医師の道へ

____先生が獣医師になられた経緯を教えていただけますか?
西田しのぶ先生実は子どもの頃、ちょうどムツゴロウさんが全盛期で、その姿にとても憧れていたんです。とにかく動物のことを理解したい、仲良くなりたいという気持ちが強くて、「じゃあ動物のお医者さんになるのがいいのかな」と漠然と思うようになりました。高校生の頃には漫画の「動物のお医者さん」が流行っていて、獣医学科という学問があることを知り、楽しそうだなと一気に興味を持った記憶があります。 今振り返ると、最初から高い志で選んだというよりは、「動物に関わる仕事をするなら獣医の資格があって困ることはないだろう」という、ごく自然な流れで選んだ道だと思います。ただ、根っこにあった「動物のことをもっとわかりたい」という気持ちは、今も変わっていません。
____大学生の頃から、積極的に動物と関わっていらしたそうですね。
西田しのぶ先生はい。もともと動物園で働くのが夢で、大学時代は馬や大きな動物にも触れておきたいと思い、乗馬クラブに「アルバイトさせてもらう代わりに、馬の乗り方を教えてください」と直談判したんです。労働と引き換えに馬と仲良くなる時間をいただけて、幸せな学生時代を過ごせました。馬に乗るムツゴロウさんの姿に、少しでも近づきたかったんだと思います。
犬猫の治療を通して、飼い主さんごと幸せにする喜びを知る

____もともとは動物園での勤務を目指されていたそうですね。
西田しのぶ先生そうなんです。就職のタイミングでも動物園を志望していたのですが、その年はどこも獣医の募集がまったく出ていなくて。動物園の獣医というのは、そもそも枠がとても少ないので、空きが出ない限り入れない、本当にご縁の世界なんです。だから私は「とりあえず犬猫も大好きだし、動物病院に行ってみようかな」と、小動物臨床の現場に飛び込みました。 そこで、犬猫を治療する仕事がとても面白く、自分に合っていることに気づいたんです。動物が元気になっていくプロセスそのものも嬉しいのですが、その先にいるご家族が安心し、笑顔になっていく。動物だけでなく、一緒に暮らすご家族まで幸せにできる仕事なのだと実感して、ずっとこの仕事を続けてきました。気がつけば獣医師歴23年、プライベートでも猫との暮らしは30年になります。 23年の中では、たくさんの治療の喜びと同じだけ、たくさんの看取りにも立ち会ってきました。最初の頃は「治してあげられなかった」と、自分を責めてしまう夜もありました。けれど、ご家族から「先生が最後までいてくださって本当によかった」とお声をいただく中で、獣医師の仕事は病気を治すことだけではないのだと、少しずつ教えてもらってきた気がします。動物園には行けなかったけれど、犬猫と暮らすご家族に伴走できる今の道が、自分にとって本当に合っていたのだと思っています。
目指すのは「世界で一番の町医者」。ホリスティックケアで暮らしごと支える
____先生をご紹介するとしたら、どのような「名医」と言えそうでしょうか?
西田しのぶ先生私が目指しているのは、「世界で一番の町医者」です。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、本気でそう思っています。 獣医療にも高度な検査や治療が必要な場面は増えていて、私一人で対応できないことも当然あります。だからこそ、自分にできることとできないことを、きちんと見極めたいと考えています。「この病気ならあの先生に診てもらった方がいい」「ここから先は専門の病院の方が安心です」と、自信を持ってご案内できること。それが町医者のとても大切な仕事の一つだと思っています。 そしてもう一つ、私にとって外せないのが「最後の看取りまで付き合うこと」です。動物と暮らすということは、いつか別れの時が来るということでもあります。その時にご家族がひとりで抱え込まずに済むように、そばで一緒に伴走できる存在でありたいんです。
____西洋医学と東洋医学を融合させた「ホリスティックケア」も、先生の診療の特色と伺いました。
西田しのぶ先生はい。治療方針を考えるうえで、西洋医学の検査や薬はもちろん大切にしていますが、それだけでは拾いきれない部分がどうしても出てきます。たとえば、病気そのものは落ち着いているのに、なんとなく元気が出ない。食欲にムラがある。そうしたサインに対しては、鍼やお灸、漢方、食事、マッサージや触れ方といった東洋医学的なケアを組み合わせることで、その子らしい穏やかな時間を取り戻せることが多いと感じています。 「治す」ことだけを目標にせず、暮らしそのものを整えていく。それが、ホリスティックケア*1という考え方です。医療の枠を超えて、その子の尊厳と、ご家族との関係そのものを支える仕事でありたいと思っています。
mewlogue・wanlogueに込めた「最期まで幸せ時間」という願い

____ご自身で運営されているサイト「mewlogue」と「wanlogue」について教えてください。
西田しのぶ先生mewlogueは愛猫と暮らすご家族のための、wanlogueは愛犬と暮らすご家族のためのケアと相談のサイトです。どちらにも共通するテーマは、「愛犬・愛猫に残された時間を、最も幸せな日々に変える」こと。動物とご家族が対話を重ねながら、最期まで寄り添える時間を支えていく場所にしたいと思っています。 具体的には、病気と向き合う日々をサポートする「執事室(wanlogueでは相談室)」、持病はなくても日常の不安を相談できる「保健室」、そして「猫様執事メソッド講座」という学びの場もご用意しています。ご相談はLINEのメッセージや通話、Zoomが中心で、近郊の方には訪問ケアも行っています。場所や時間にあまり縛られず、ご家族のペースでつながれる場になればと思っています。
____「執事」という言葉が、とても印象的ですね。
西田しのぶ先生ありがとうございます。私は、飼い主さまのことを「その子の世界でたった一人の執事」だと思っているんです。毎日そばにいて、誰よりもその子のことを知っている人。だから、私の役割は代わりに診断を下すことではなくて、執事であるご家族の気づく力を一緒に育てていくことだと考えています。 「延命しているだけなのかな」「これでこの子は幸せなのかな」と、答えの出ない問いに揺れる時間こそ、一人で抱え込まずに、静かに話せる場所があってほしい。そんな思いで、mewlogueとwanlogueを少しずつ育てています。
小さな変化に気づき、「言葉にならない気持ち」を一緒に通訳する

____日々のご相談や診察で、とくに大切にされていることはありますか?
西田しのぶ先生まず心がけているのは、そのコの「ちょっとした変化」に気づくことです。前回と比べて少し痩せたかな、歩き方がゆっくりになったかな、目の輝きはどうかな、といった小さなサインを拾えるように意識しています。その積み重ねが、病気の早期発見や、ケアの方向を変えるタイミングを教えてくれると感じています。 もう一つは、そのコの「いいところ」を必ず一緒に見つけて、言葉にすることです。ご家族にとっては、世界でたった一頭の自慢の子です。だから「ここがユニークで素敵ですね」「この表情、たまらないですよね」と、私からもちゃんとお伝えするようにしています。動物が大好きすぎて、褒めるところは放っておいても見つかってしまうのですが、それを口に出すかどうかで、場の空気がまるで変わるんです。 そして、訪問ケアや診察の終わりには、お伺いした時よりもどこか一つ、きれいにしてお返しすることを大切にしています。目やにを優しく拭うだけでもいいんです。動物がきれいになると、ご家族の愛着がさらに深まって、「うちの子、こんなにかわいかったんだ」と再発見してくださることが多くて。その時間こそ、私にとって一番嬉しい瞬間です。
____最後に、この記事をお読みの飼い主さまへメッセージをお願いします。
西田しのぶ先生愛犬や愛猫の加齢や病気と向き合ううちに、「どうしてあげるのが一番いいのだろう」と、答えの出ない問いを抱えてしまう方も、たくさんいらっしゃると思います。通院が難しくなってきた、最期の時間の過ごし方を考え始めた、そんなタイミングで、誰にも相談できず一人で悩んでしまうことも少なくありません。 mewlogue・wanlogueでのご相談が、そうした方々にとって、「幸せの方角」を一緒に見つけていく小さなコンパスになれたら、と私は信じています。西洋医学と東洋医学の両方を使いながら、できることとできないことをはっきりお伝えし、ご家族と動物の「最期まで幸せな時間」を、一緒に形にしていきたいと思っています。 どんな小さなお悩みでも、ぜひ私に聞かせてください。愛する動物と過ごしてきた日々を、誇りに思える時間に変えていくお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。

