ブレストケアの名医【島田菜穂子先生/ピンクリボンブレストケアクリニック表参道】通いやすさを追求した乳がんと婦人科の専門院

日本で9人に1人が罹るといわれる乳がん。発症率が高まる一方、早期発見されれば90%治癒するがんとも言われています。今回はピンクリボン運動で知られる認定NPO法人 乳房健康研究会の副理事長を務める、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長の島田菜穂子先生に、30~40代の女性だからこそ受けておきたい乳がん検診のお話を伺いました。

___先生のご経歴を教えてください。

島田菜穂子先生私が医学生で病院実習で各科を回っていた時、座学の授業では正直何をしている医者なのか想像がしずらかった放射線科の実習の時にまさに目からうろこでした。
最新の機械で様々な検査をして症状を診断し、他科の医師へ診断結果や治療法の提案までを行うドクターズドクター!放射線科診断医の姿を見てこんな医者の形があるんだと…本当にかっこいいなあと思いました。
「ラジエーションハウス」という作品をご存じでしょうか?診断に最適な画像を撮影する放射線技師とその画像をもとに様々な情報を組み合わせて患者の病気の謎をクイズのように問き画像診断する放射線科医の物語です。
まさにラジエーションハウスの世界。放射線科医を目指したのはそういった先輩へのあこがれの気持ちからでした。

____ドクターズ・ドクター、医師の相談にのる医師という意味ですね。重要な役割を担っている分、大変なことも多いのではないでしょうか。

島田菜穂子先生ドクターズドクター放射線科に勤務するようになった当時は、患者さんからも他科の医師からも若い女性医師はなかなか信頼を得るのが難しい状況でした。でも、症状の聞き取りや普段の様子などを話しながら女性の患者さんの検査をしているときに気づいたのです。 症状が起きた時のことや詳しい今の状況など、主治医の男性医師にはあまり話していなかった診断のヒントになるたくさんのお話を、女性の患者さんは若造の女性放射線科医の私にだけ話してくれているのです。 特に女性が最も多くかかるがん…乳がんの患者様との直接お話をしながらの検査は診断に多くのヒントを与えてくれるだけでなく、患者さまからも検査が終わった時に、いろいろな心に詰まったことを話せてよかったと感謝していただくことも多く、大きなやりがいを感じるようになりました。 これが私が全身の画像診断から乳がんへの専門性へ舵を切った理由です。外科や放射線科の上司の理解にも助けられ、東京逓信病院で放射線診断医としてはじめて25年前、乳腺外来を開設しました。

___アメリカ留学を経て現在のクリニックを開業されたのですよね。

島田菜穂子先生症状がある方が直接乳腺外来を受診されて検査をする、という形を作ることはできたのですが、当時外来へいらっしゃる患者さまは結構症状が進んでから受診される方が多かったんです。正直ショックでした。もう少し早く受診してくだされば…!と思うことがすごく多かった。 具体的に何をすればよいかわからず悩んでいたころ、アメリカへ留学をするチャンスがありました。実はアメリカは日本よりも乳がんの発症率が高かった。一方で乳がんで亡くなる方はその時かなり減ってきていました。その理由を探っていくと、がんが発見されるタイミングが日本よりもずっと早いんです。 早期に発見し治療できれば、乳がんで亡くなる方もおのずと減っていきます。日本は症状が出て初めて病院に受診して発見される方が殆どでしたが、アメリカでは何も症状がないうちから定期的に検診を受ける習慣があったため、当然早期に発見できる方が多かったんです。 日本人女性も健康意識が決して低くはなかったのですが、乳がんに対する正しい知識と、乳房に対する意識(ブレストアウエアネス)が低かったために、行動に結びついていなかったのです。 日本人女性を乳がんから救うには、病院で患者さんを待っているだけでなく、乳がんの知識向上と行動を助ける活動をしなければ…と、帰国後すぐに乳がん啓発活動、ピンクリボン運動を行うNPOを立ち上げました。

____すごい行動力です。ピンクリボン運動はいま広がりを見せて意識改革にも大きく貢献されていると思います。

島田菜穂子先生活動を続けるうちに、意識が上がっても検診に受診できない、様々な障壁があることに気づきました。検診へ気軽に行ける工夫が必要なのです。 日本人は海外の方に比べて乳がんの発症年齢がぐっと若い傾向にあります。海外の場合は閉経後に発症する方が圧倒的に多いのですが、日本人の場合は働き盛りの年代が多い、 だからこそ私がクリニックをオープンするのなら若い女性たちが通いやすいクリニックにしなくてはという意識がありました。 通いやすく気分も上がる場所にする、遅い時間や土日も診察する、検査スタッフも女性にする、など環境や空間づくりには特にこだわって準備しました。

___30代以降でクリニックに来られる患者さまのお悩みはなんですか?また、どのような検査・治療のご提案やアドバイスをされていますか。

島田菜穂子先生30~40代の皆さんはお仕事もプライベートも忙しく、検診を受ける時間も惜しいくらいですよね。若いので自分がまさか病気になるなんてあまり想像できない方も多いです。ついつい症状があっても受診や検診は後回しになることも良くあります。 ただ乳がんはほかの臓器のがんに比べて若い年代からかかる病気。30代半ばからぐっと増えてきます。また最近では生理不順やPMS、不妊治療などで女性ホルモン剤を使っている方も多く、知らないうちに乳がんリスクが高くなっている方も多いのです。 乳がんの確実な予防法がない今、誰にとっても乳がんになる可能性がありますが、幸い乳がんは早く発見して治療すれば再び日常を取り戻し、妊娠出産もできますし、仕事のキャリアをあきらめることもなく夢を実現することもできます。治療期間も治療による経済的な負担も少なく済みます。 これからもずっと生き生きと自分らしくやりたい人生を送るために忙しい今だからこそ、きちんと自分に目を向けてセルフチェックや定期的な検診と健康管理をすること、そうすればもし仮に病気が見つかったとしても自分で好きな治療を選び治療後の生活を好きなように生きることが可能になる、とお話ししています。

____実際に検診を受けるとしたら、どういったメニューがおすすめでしょうか。

島田菜穂子先生忙しい皆さんには乳がんと子宮頸がんの検診を一度に受けられるレディース検診がおすすめです。「レディースフル」 *1 というコースでは乳房の超音波検査とマンモグラフィをはじめ、子宮頸がんの検査もしっかり行い、結果も診察当日にお伝えします。お時間が取れない方には「レディースクイック」 *2 というコースもご用意しています。ご自身の都合に合わせてお選びいただけます。

___現在、先生が特に注力して取り組まれていることを教えてください。

島田菜穂子先生アメリカから帰国後、ピンクリボン運動を行う乳癌啓発団体「乳房健康研究会」を発足し、現在副理事長として活動しています。日本でピンクリボン運動を立ち上げて今年で21年になり、少しづつ女性の乳がん意識は向上していますが、それでもまだまだ検診という行動に結びついていない方も多いのが現実です。 そんな中、家族や友人など身近な人から実際に乳がんの話や検診の様子などを聞くことが、受診のきっかけになることも分かってきました。ひとりひとりが乳がんの正しい知識を持ち、自分自身のためにも、誰かのためにも自信を持って声掛けができるような環境を作りたいと思い、ピンクリボンアドバイザーという仕組みを作りました。 ピンクリボン認定試験をきっかけに学び、意識を高める機会を作っています。認定試験に合格したピンクリボンアドバイザーは今では全国に約7000人、乳がん検診や乳がんを取り巻く環境改善のために、身近な人への働きかけから、全国の中学校高校でのがん教育、ピンクリボンイベントの開催等、様々な活動を行っています。

____確かに、自分だけでなくみんなで乳がんへの意識を高めていくことが大切ですね。乳がんへの意識を高めるためにも、普段からできることはありますか?

島田菜穂子先生皆さんにはぜひ、毎月セルフチェックをしていただきたいですね。 難しく考えず、普段の自分の状態を知ることが大切です。お風呂やシャワーの時手で乳房を洗ったり、ボディクリームを塗るなど日常の続けられることで自分のいつもの状態を知っていくことで、何か異変が起きたときに気づきやすくなるのです。 チェック方法
1)4本の指を揃えて、指の腹と肋骨で乳房をはさむように触れ「の」の字を書くように指を動かします。そのときに、しこりや硬いこぶがないか、乳房の一部が硬くないか、脇の下から乳首までチェックします。
2)乳房や乳首をしぼるようにして、乳首から分泌物がでないかを調べます。
鏡の前で腕を高く上げて、ひきつれ、くぼみ、乳輪の変化がないか、乳首のへこみ、湿疹がないかを確認します。また、腕を腰に当ててしこりやくぼみがないかも観察します。

____確かに、身体を洗いながらなど日常でチェックするのを習慣にしていくことが大切ですね。

島田菜穂子先生そうですね。病気になる前の段階から、スキンケアや歯磨きのように自分の胸にも意識を向け、ブレストケアを習慣にしていきましょう! そしてもし異変に気づいたら、自分であれこれ診断するのではなく、しっかり安心できるためにも乳腺科へ必ず受診することが大切です。

___患者さまと普段どのように向き合われているのか、その想いをお聞かせください。

島田菜穂子先生何が心配で受診することになったのか、患者さまの疑問に答えを出せる検査や診察を心掛けることです。そのため異常があるかないかだけでなく、病的な異常がなかった場合でも必ず患者様が受診するきっかけになったその症状が起きた理由は何だったのか説明し、診察の結果報告書にも記載します。 そして、自分が患者だったら受けたい医療を提供すること。私自身もそうですし、スタッフにも毎月のミーティングで必ず伝えていることです。患者さんは不安な気持ちを抱えてクリニックを受診される方も多いです。医療レベル向上のための精度管理や個々の研鑽はもちろんのことですが、環境や心遣いなども含め、快適に安心して受診頂くための努力を積み重ねています。 受診には勇気がいることも多いかもしれませんが、検査や診察が終わりクリニックを出るときはすっきり笑顔で安心してお帰り頂けるよう、スタッフ一人一人、心を込めて診療をしていますので、どうぞ気軽にクリニックを受診してくださいね。

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プロフィール
島田菜穂子先生
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道/院長 島田菜穂子先生 1988年に筑波大学卒業し、その後さまざまな病院の放射線科に勤務。1998年には約一年間渡米をして研究を行うなど、乳腺についての知識を深めていく。帰国後はアメリカでの経験も生かし、ピンクリボン運動の立ち上げにも参加するなど、積極的に乳がんの啓蒙活動をおこなう。2008年、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道を開院。

治療メニュー等

*1
検査名:レディースフル 検査の説明:乳がんフルコース(マンモグラフィ・乳腺エコー・視触診・診察・結果報告)+子宮頚がんベーシック(内診・頚部細胞診・経膣エコー)
費用:31,000円
*2
検査名:レディースクイック 検査の説明:乳がんクイック(マンモグラフィ・乳腺エコー)+子宮頚がんライト(内診・頚部細胞診またはエコー(経腟、経直腸、経腹のいづれか))
費用:18,000円


ライタープロフィール
先生のこれまでの活動をお聞きし、いかに日々のセルフチェックと早期発見が重要か実感しました。家族や友人に声を掛け、自分自身もブレストケアの気持ちを忘れず乳がん検診を受けるようにしていきたいと思います。