島根県出雲市に所在する出雲いいじまクリニック。全国で初めての「不登校専門クリニック」として、診療科の垣根を超えた総合的な心身医療を行っています。今回は院長である飯島先生に、不登校診療法や診察についてのお話、また先生ご自身のお話などを詳しく伺いました。
隠れ家的な雰囲気にすることで、気兼ねなく通院できる環境を

____貴院のコンセプトと特徴をお聞かせください。
飯島慶郎先生当院は「不登校専門」をコンセプトとし、不登校の子どもたちとそのご家族のための国内初のクリニックとして開院しました。また、看板を掲げない「隠れ家的な雰囲気」を大切にし、患者さまが人目を気にせず安心して通えるような工夫をしております。そして、経営形態を完全ミニマム開業にすることで、診療に専念できる体制を整えました。
____飯島先生のご経歴を教えてください。
飯島慶郎先生島根医科大学医学部卒業後、初期研修で神経内科を選択し、その後三重大学医学部付属病院の総合診療科で研修を行いました。研修医生活を終えてからは故郷島根県に戻り、浜田市の公営の診療所に赴任。平成30年1月から現在のクリニックの前身である「統合医療出雲いいじまクリニック」を開院し、令和4年5月まで院長を務めました。令和5年4月からは島根大学医学部附属病院の精神科神経科専攻医として再度研修医生活を始めています。
____飯島先生が医師を志したきっかけを教えてください。
飯島慶郎先生私は幼い頃から体が弱く、週に一度は近所の小児科医院に通院していました。そのときの院長先生の姿があまりにもかっこよく見えたことがきっかけで、「医師は多くの人から頼りにされる素晴らしい仕事だ」と感銘を受け医師になることを志しました。また、母が薬局を経営しており、薬の知識を使って人助けをする姿に強く影響を受けたことも一つです。
____先生がご自身を「◯◯の名医」というとしたら、何の名医だと思いますか?
飯島慶郎先生「不登校診療の名医」だと思います。当院を開院後は、延べ100人以上の不登校の子どもたちを診療してきました。大多数は何らかの精神疾患であり、適切な治療を行ってきました。子どもの心の叫びに耳を傾け、一人ひとりに寄り添った治療を行うことで、多くの子どもたちを回復へと導いてきたことを誇りに思っております。
一人ひとりに合わせた投薬治療と心理療法で改善へ

____飯島先生が特に注力している治療法はどのようなものでしょうか?
飯島慶郎先生当院では、診療科の垣根を超えた総合的な心身医療を提供しています。その中でも特に他院で解決できない複雑な病態や、不登校児の診療、不定愁訴(心身に起こる原因不明の諸症状)の治療に注力しています。
オリジナルの不登校診療法を確立し、精神疾患の正確な診断のもと、一人ひとりに合わせた投薬治療と心理療法を組み合わせて改善へ導きます。さらに、東洋医学も取り入れ、漢方薬も積極的に活用しています。
____普段どのようにして知識の習得に励まれているのですか?
飯島慶郎先生日々の診療こそが何より学びの場だと捉えています。患者さまから学ぶことは計り知れません。一人ひとり異なる背景や症状に向き合い、試行錯誤を繰り返すなかで、医学的な知識だけでなく、人としての心の在り方についても学ばせていただいています。また現在は、島根大学医学部附属病院で精神科の専門研修を受けており、最新の知見を吸収すべく日々励んでいます。
____診察を行う上で大切にしていること、心がけていることはありますか?
飯島慶郎先生患者さまやそのご家族が何を解決し、どういう状況へ改善したいのかを丁寧にヒアリングし、寄り添うことを大切にしています。特に子どもの場合は、自分の症状を的確に言語化できないことが多いので、様子をよく観察し、ご家族からも詳しく話を聞くようにしています。診断名は本人にも必ずお伝えし、今苦しんでいるのは病気のせいで自分は悪くないのだと理解してもらうことで、自責の念から解放されることを意識しています。
____どんな悩みを抱えている患者さまに来院してほしいですか。
飯島慶郎先生学校に行けない、行きしぶりが見られるお子さまを持つご家族の方、また原因不明の症状に苦しんでいる方にご来院いただければ、お役に立てると思います。不登校の背景には、様々な要因がありますが、私の経験上、その多くに精神疾患の関与が見られます。ただそれは特別なことではなく、むしろ自然な心の反応だと捉えています。
病気のせいで苦しんでいる自分や親を責める必要は全くありません。きちんとした対処をすることで、必ず状況は改善に向かうはずです。
「病は心から」。心と体のバランスを保つことが大切である

____健康を保つ上で、大切だと思うことはなんだと思いますか?
飯島慶郎先生心と体のバランスを保つことだと思います。なぜならば、心と体は密接に関係しており、心が健康でなければ体の健康も損なわれ、体が不調だと心も落ち込んでしまうからです。心と体、両方の声に耳を澄まし、バランスを崩さないよう意識して生活することが健康の秘訣だと思います。子どもの場合は、周りの大人がその小さなサインを見逃さず、必要なケアにつなげてあげることが重要ですね。
____クリニックを選ぶ際に重視した方が良いと思うポイントはありますか。
飯島慶郎先生一番大切なのは、自分の心に正直になることだと思います。クリニック選びは、恋人選びに似ています。この人になら心を開いて相談できる、安心して身を任せられると感じられるかどうか、直感を大事にしてほしいですね。評判や口コミ、専門性も参考にはなりますが、何より自分の「感覚」を信じること。特にメンタルケアは、担当の先生との相性が何より大切だと思います。
____今後の貴院の展望を教えてください。
飯島慶郎先生最近は、当院の予約が混み合っており、新規の患者さまをお受けすることが難しい状況です。今後は、少しでも多くの患者さまへの診療ができるよう、体制の拡充を図っていきたいと思っております。
____最後に、患者さまへメッセージをお願いします。
飯島慶郎先生昔から「病は気から」などといわれますが、私は「病は心から」だと考えています。体の不調の多くは、心の叫びのサインです。特に精神疾患は心と体が密接に絡み合っており、原因不明の身体症状として現れることが少なくありません。心の奥底に蓋をして我慢を重ねていると、いつかは心も体も限界を迎えてしまいます。
現在は、子どもの精神疾患に特化した医療機関が非常に少ないのが実状です。そのため、すぐに受診することが難しく、多くの子どもたちが必要な治療を受けられずに苦しんでいます。この状況を改善するには、社会全体でこの問題の重要性を認識し、国を挙げて取り組んでいく必要があります。私自身、長年不登校の子どもたちの診療に携わる中で、適切な治療の提供がいかに大切かを痛感してきました。
一人でも多くの子どもたちが、心の叫びに気づいてもらい、必要な時に必要な治療を受けられる世の中になってほしい。そんな想いから、これからも子どもの心のケアに尽力していきたいと考えています。