東京銀座と、大阪梅田に2院を展開する「銀座みゆき通り美容外科」。「クマ取り治療の名医」である院長の水谷和則先生のもとには、全国各地はもとより海外からも患者さまが訪れます。整形外科医、産婦人科医を経験した後に、自らの活躍の場として選んだ美容外科の世界で研鑽を積み、確立したクマ取りの治療法とは。水谷先生のこれまでの歩みなども含め、詳しくお伺いしました。
細かな作業を得意とする私を魅了した美容医療の世界
___水谷先生が医師を志したのはどういった経緯からでしょうか?
水谷和則先生幼い頃からの話をさせていただくと、父が建築関連の仕事をしていましたので、家にたくさんの手描きの製図がありました。その細かく美しい描写に目が釘付けになり、父から手解きを受けながら模写をするようになったんです。絵を描くのも好きでしたので、あっという間に大人顔負けの製図が描けるようになりました。その頃から、いずれは建築設計の道に進みたいと思うようになり、大学は理工系の学部をめざしました。ですが残念ながら第一志望が不合格に。
そこから1年だけという約束で予備校に通いましたが、仲間たちは皆、東大や医学部進学をめざす人ばかりでした。そこで、たまたま見せてもらった医学書に血管や神経のことが細かく描かれていて、それがかっこよく見えたんですね。
理工系の学部志望でしたが、医学部も併せて視野に入れるようになり、最終的には医学部にも合格。どちらの道を選ぼうかと迷いましたが、当時は医学部により心が惹かれまして。「絶対に医師になる!」という強い意志があったわけではありませんが、あの時の選択のおかげで現在の自分があると思っています。
___美容外科医になる先生方は、形成外科出身の先生が多いようですが、水谷先生もそうだったのでしょうか?
水谷和則先生本来なら形成外科がベースにあるべきだと思いますが、私が卒業した福島県立医科大学やその近隣の大学医学部には、その当時独立した形成外科がなく、あったとしても皮膚科や整形外科の中の一部門に過ぎず、専門とする先生もわずか数名のみという状況でした。
私は手先を使った細かな治療を行う科に進みたかったので、最初は整形外科に、その後、不妊治療の顕微授精ができる産婦人科にも勤めましたが、どちらも本気でのめり込むことができずにいました。
ちょうどその頃、美容外科の情報が耳に入るようになってきました。大学の先輩で美容外科を専門にしている方がいるということを耳にして、お願いして手術も見学させていただきました。そこで目にしたのは、シワ取りのフェイスリフトや目の切開手術。一瞬で「私がやりたかったのでこれだ!」と思いましたね。ただ当時は、一般の方の間でも、医師の間でも「美容整形は金儲け、真っ当な医療ではない」などと思われていた時代でしたので、家族を説得するのも一苦労でした。
___かなり紆余曲折があったようですね。それからは順調に進んだのでしょうか?
水谷和則先生もちろん、美容外科は私にとって初めての分野でしたので、しばらくは苦労することもありましたが、正確さや緻密さを追求してきれいに仕上げるという仕事に、私の道はこれだと確信しましたね。
効果の高い治療を求め開発した「クマ取り治療」
___そこから現在のクリニックを立ち上げるまでに、10年程大手の美容外科でご経験を積まれたようですね。
水谷和則先生美容外科の施術に関しては一通り経験させていただきました。その中でも、目の下のクマに関する治療には特に関心を持っていました。
というのも、私が美容外科医になった頃、目の下の治療というと「しわ取り手術」しかなく、目の下の皮膚を切り取るだけの手術や、そこから脂肪を取って終了という手術が一般的で、いわゆる色の濃いクマや、目の下の窪みにはそれほど効果がありませんでした。なにか良い方法があるはずだと思い論文などを調べるうちに、瞼の裏から脂肪を取る手技があるとわかり、結膜から脱脂を行う治療を始めました。さらに、豊胸や頬の凹みを改善するために使っていた脂肪注入を、クマの色や凹みの改善に取り入れたところ、良い結果が得られるようになったんです。
___そのことがきっかけとなり、クマ取り治療の第一人者になられたということですね。
水谷和則先生誰も着想してなかったという意味では、クマ取り治療*1の先駆けだったかもしれませんね。良い治療を施したい一心で、手術道具も工夫して自己流で始めた結果です。
___その後、2006年に銀座みゆき通り美容外科を開業されていますね。
水谷和則先生そうですね。美容外科に関わる治療全般でかなりの経験を積みましたので、開業に踏み切りました。ただ、当初からクマ取り治療を前面に押し出していたわけではありませんでした。
___クマ取り手術に効果があると実感されていたにもかかわらずですか?
水谷和則先生当時はまだ、クマを治療するという概念が一般には浸透していませんでした。
こちらがご提案しない限り、「美容整形でクマ治療ですか?」「クマって取れるんですか?」という声が大半でしたので、患者さまの数としてはそれほど多くはなかったですね。ですが、スタッフからの勧めもありホームページで紹介したところ、徐々に患者さまが増えてきました。
開業の翌年に「日本美容外科学会」の学会長を仰せつかり、その学会でクマ取り治療について日本初で発表しましたが、医師からの反響がすごかったですね。その後、クマ取り治療について国内外の美容外科関連の学会に招待されて講演をしたり、医師向けの教科書を書いたりしていますので、クマ取り治療が年々普及して、今では全国の美容クリニックで当たり前のようにクマ取り治療が行われるようになったというわけです。
脱脂と脂肪注入を組み合わせて行うオーダーメイド治療
___クリニックのホームページを拝見すると、クマは遺伝の影響も大きいようですね。
水谷和則先生子どもが親の顔つきや骨格に似るように、皮膚の厚みや脂肪の量も遺伝しますので、クマになりやすいタイプの方はいらっしゃいます。また、年齢も大きく影響しますね。
マスコミの情報から、スマホの使いすぎやストレスが原因などと思われがちですが、生活習慣はほとんど関係しません。さらに言えば、ホットタオルやマッサージで治るものでもないんです。
___クマにはどのようなタイプがあり、またどのような治療になるのでしょうか?
水谷和則先生わかりやすく分類すると、「影クマ」、「紫クマ」、「茶クマ」の3つのタイプがあります。
中でももっとも典型的なものが「影クマ」。これは形の問題で、膨らみに対しては脱脂をする、凹みに対しては脂肪もしくはコラーゲンを注入する治療で対応します。また、影クマは陰影によって色が濃く見えるものですので、形を変えることによって色の解決にも繋がります。
一方、形がなくてもクマのある方は色クマと呼ばれる2タイプ、「紫クマ」と「茶クマ」に該当します。茶グマは色素沈着によって起こるもので、紫クマは皮膚が薄く血管や筋肉の色が濃いところが透けて見える現象です。クマのタイプが複合的に起こっている患者さまも多く、脱脂や脂肪注入を含めて、それぞれの症状に対して最適なオーダーメイドの治療を行っています。
___注入に使用する脂肪は、患者さまご自身の脂肪ということでしょうか?
水谷和則先生そうですね。ある程度の量がないと色々な目的に応じた加工ができませんので、患者さまご自身の太ももやお腹から吸引した皮下脂肪を使用します。医療機械の進歩によって、年々精度の高い加工が行えるようになっています。
___クマの治療ではどのようなことに気をつけているのでしょうか?
水谷和則先生目元の薄い皮膚に綺麗に脂肪を注入するには、コツがあります。
脂肪を注入した場合、徐々にその脂肪が減る可能性や、残った脂肪がしこりになってしまう可能性もあります。真顔だとわからなくても笑った途端に不自然に見えるというトラブルが起こる場合も。そうならないように治療するには、ある程度の経験と併せて、根本的な理論を理解する必要があります。
___実際にクマ取りの手術を受けられた患者さまの反応はいかがでしょうか?
水谷和則先生クマがあるのとないのとでは顔の印象が大きく変わりますので、大変喜んでいただいていますし、満足度の高い治療だと自負しています。
私自身も年齢とともに影クマができ、当院の先生に手術をしてもらいましたが、やって良かったと実感しています。
___先生の手術の様子はホームページで拝見しました!クマ取りをした場合、どのくらいの期間、効果が見込めるのでしょうか?
水谷和則先生かなり長いですね。ただ、人間の身体は老化により変化しますので、概ね20年程経過すれば多少のたるみが出るといったところでしょうか。なにもしなければクマの症状はどんどん進みますので、メリットは大きいと思います。
___そんなに長くとは驚きです。これまでに行ったクマ取り手術はかなりの数に上ると思いますが。
水谷和則先生私の仕事の半分以上はクマ取り手術ですので、これまでに1万件以上の症例数があります。患者さまは全国からお見えになりますし、通訳を伴った海外の患者さまもいらっしゃいます。
自らの経験と知識を広め、実現したい患者さまの幸せ
___後進の指導といった意味ではいかがでしょうか?
水谷和則先生おかげさまで、当院には10年以上勤める腕のあるドクターが数名いますので、安心して治療を任せています。
医療技術には特許がありませんので、皆さんのお役に立てばと思い、クマ取り治療に関しては当初よりその方法を公開しています。そのため、さまざまなクリニックで取り入れられるようになりましたが、同時に、医師の技術や知識の不十分さからトラブルが発生するということもあり、他院で行った治療を修正することもあります。
引き続き、学会での講演や論文の執筆を行ったり、当院への医師の見学も受け入れたりして、安全で確実な手術法を広めていきたいと考えています。
___今後の展望をお聞かせいただけますか?
水谷和則先生とにかく、目の前の患者さまときちんと向き合うことですね。
どうしても手を広げすぎると、注意が散漫になり目の届かない部分も出てきてしまいます。今まで積み重ねてきたことを正確に行い、当院の医師にも正しい医療を伝えていきたいと考えています。
また当院の理念にも掲げているように、患者さまと働くスタッフがともに幸せになれるクリニックをめざしていければと思っています。
___最後にぜひ、読者の方へメッセージをお願いします。
水谷和則先生なにかお悩みのことがあれば、まずは専門の医師に相談することをお勧めします。
自分一人で悩んでいても、時間ばかりが過ぎてしまいますので、ぜひクリニックに足を運んでいただきたいですね。また、その際には必ずいくつかのクリニックを比較していただければと思います。残念ながら、金儲け主義に傾倒しているクリニックもありますが、比べることで、その質の良し悪しは自ずとわかるはずです。
ご自身の目を肥やすためには情報集めも大切ですが、ネットの情報は往々にしてネガティブなものが目立ちますので、それだけで疑心暗鬼になるのは危険です。また、即決をするのではなく、じっくりと考えて納得することも肝心ですね。
その上で、信頼できる先生と出会うことができれば、息の長い信頼関係が築けると思います。