摂食嚥下リハビリテーションの名医
山田崇弘先生 
すこやか歯科クリニック

JR熊本駅から徒歩10分、産業道路沿いに位置する「すこやか歯科クリニック」。院長の山田崇弘(やまだ たかひろ)先生は、一般歯科治療だけではなく、口腔機能低下や嚥下障害に対する摂食嚥下リハビリテーションにも力を入れています。今回は山田先生に、歯科医師を目指した経緯、摂食嚥下リハビリテーションの重要性、そして「食べる喜び」を支える取り組みについて、詳しくお話を伺いました。

祖父の経験をきっかけに「食べる」を支える歯科医師へ

____先生が歯科医師を目指された理由を教えていただけますか?

山田崇弘先生歯科医師を目指すようになったのは、祖父の経験がきっかけです。祖父は総入れ歯だったのですが、ある時期から入れ歯が合わず食事が摂れなくなり、みるみるうちに体力が落ち、歩くことさえ難しい状態になってしまいました。 そこで歯医者さんに入れ歯の調整をしてもらったところ、しっかり噛んで食べられるようになり、栄養状態が改善して体力も回復しました。元気に歩けるようになった祖父を目の当たりにして、「歯科医師って素晴らしい」と心から感動したのを覚えています。その出来事から、歯科医師を目指すようになりました。

____お祖父さまを通じた経験が、先生の専門分野への関心につながっているのですね。

山田崇弘先生そうですね。祖父の件で「噛める」ことの大切さを痛感し、さらに歯科医療を学ぶ中で「飲み込む(嚥下)」ことにも興味を持つようになりました。人間が生きる上で欠かせない「食べる」という行為全体を、歯科医師として専門的にサポートしたいと考えるようになったのです。

「食べる力」の衰えに早期介入。口腔機能とリハビリテーション

____先生が力を入れている「摂食嚥下リハビリテーション」について教えてください。

山田崇弘先生摂食嚥下リハビリテーション*1​​は、食べる力を維持向上するための医学的なアプローチです。摂食嚥下リハビリテーションというと、明らかな咀嚼障害や嚥下障害を連想されるかもしれません。広義の意味では加齢などでお口の機能が衰えてきた方のサポート、つまり「口腔機能管理」も含まれます。 実は50歳を過ぎると、お口の機能は少しずつ低下し始めるといわれています。食べる機能を長く維持するには、早い段階での介入が鍵です。当院では口腔機能の評価として、口腔水分量測定、舌圧測定、「パ」「タ」「カ」の発音回数を測るオーラルディアドコキネシスといった7項目の検査を行っています。基準値を下回る項目が多いと、口腔機能が衰えている可能性があり、将来的な嚥下障害や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

____口腔機能が衰えていると診断された場合、どのようなリハビリテーションを行うのですか?

山田崇弘先生検査結果に基づいて、低下している機能に合わせたリハビリ計画を立てます。リハビリテーションの例としては、舌の力を鍛えるトレーニング、唇や頬の筋肉を動かす体操、唾液腺マッサージ、安全な飲み込み方を練習する嚥下訓練などがあります。また、食事内容や食べ方のアドバイス、お口の乾燥対策なども行います。

____高齢などの理由で来院が難しい方には、訪問診療での摂食嚥下リハビリテーションを行っているそうですね。

山田崇弘先生訪問診療の場合、すでに嚥下機能の低下がみられる方が多いですね。実際の診療では、まず患者さまの食事場面をしっかり観察します。認知症の方であれば、食ベる動作や姿勢はもちろん、食べ物をきちんと認識できているかといった点も重要です。これらを踏まえた上で、歯科医師として口腔機能評価とリハビリテーションを実施します。 摂食嚥下リハビリテーションの最終目標は、「安全に、そしてできる限り長くご自身の口から栄養を摂っていただくこと」です。実現するために、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士といった多職種とのチーム連携を大切にしています。また、患者さまの口腔機能に合わせて、義歯の調整や作成も行っています。

些細な変化を見逃さず、食べる喜び・繋がる喜びを守るために

____口腔機能の低下を自覚できる症状としては、どのようなものがありますか?

山田崇弘先生よくあるのは「口が渇きやすくなった」「滑舌が悪くなり、話しにくくなった」「硬いものが噛みにくくなった」「お茶や水でむせるようになった」などです。「最近、食事に時間がかかるようになった」というのもサインかもしれません。こういった些細な変化を見逃さず、早期に相談していただきたいですね。

____診察を行う上で、先生が最も大切にしていることは何でしょうか?

山田崇弘先生患者さま一人ひとりの状態を的確に評価し、その方の生活背景や価値観を踏まえた上で、よりよいサポートを提供することです。そして、患者さま自身が「自分の健康は自分で守る」という意識を持てるように、丁寧な説明と動機づけを行うことを大切にしています。言われたからやるのではなく、納得して自ら取り組んでいただくことが、リハビリテーションの効果を高める上で非常に重要です。

____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。

山田崇弘先生「食べる」「話す」といったお口の機能は、私たちが豊かに生きていく上でなくてはならないものです。しかし多くの場合、その機能を失いかけて初めてそのありがたさを痛感します。食べることや話すことが困難になった方々をたくさん見てきたからこそ、皆さまには、食べられなくなる前の段階でお口の健康に関心を持っていただきたいと願っています。 人生100年時代、最後までご自身の口から美味しく食事を楽しみ、大切な人と笑顔で会話ができるように、お口の不調を感じた時はぜひ当院にいらしてください。

プロフィール
山田崇弘先生
医療法人社団松下会 すこやか歯科クリニック/院長 山田 崇弘(やまだ たかひろ)

九州歯科大学卒業後、福岡県・熊本県内の歯科医院にて一般歯科・訪問歯科の経験を積み、分院長・副院長を歴任。祖父の経験から「食べる」ことの重要性を痛感し、摂食嚥下リハビリテーションの分野に注力。日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の資格を取得し、現職に就任。外来診療と訪問診療を通じて、小児から高齢者まで幅広い年代の口腔機能管理・摂食嚥下リハビリテーションに取り組む。
<資格・所属学会>
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 認定士
日本老年歯科医学会
日本スウェーデン歯科学会会員
口腔感染症予防外来認定医
デンタルコンセプト21会員
Digital implant Meeting 会員(総務)
日本口腔インプラント学会会員
佐賀大学医学部歯科口腔外科 研修登録医
問い合わせ: 096-353-6000

治療メニュー等

取材日: 2025年5月1日 *1
◾️施術名:摂食嚥下リハビリテーション
◾️施術の説明:加齢や疾患などにより、摂食・嚥下機能や会話などのお口まわりの機能が低下した方に対して行うリハビリテーション。検査を通じて口腔機能を評価し、結果に基づいて口腔周囲筋のトレーニング、嚥下訓練、食事内容や姿勢の調整、介助方法の指導、口腔ケア指導など、個別のリハビリ計画を立案・実施する。歯科治療(義歯調整など)と並行して行われることも多い。誤嚥性肺炎の予防、栄養状態の改善、QOLの向上、安全で楽しい食事の継続を目的とする。すこやか歯科クリニックでは、訪問診療にも対応している(半径16km圏内)。
◾️施術のリスク:
当院では、摂食嚥下リハビリテーションを保険診療で行っております。
ご高齢の方や口腔機能に課題のある方に対し、医師の診断・指示のもと、安全に配慮して訓練を進めております。
リハビリ中には、一時的な咳き込みや疲労感が生じる場合があります。状態に応じた適切な評価を行い、リスクを最小限に抑えて実施しております。
◾️費用(税込価格)
摂食嚥下リハビリテーション・口腔機能管理に関する費用は、保険診療の適用範囲や個別のプログラム内容により異なります。詳細についてはクリニックにお問い合わせください。


ライタープロフィール
小川佳子
管理栄養士免許を取得したのち、中核都市の総合病院に配属。疾患・術後に対する栄養指導、特定保健指導、NSTラウンドなどを担当する。育児をきっかけにWEBライターに転身し、現在は健康増進・美容医療・不妊などに関する記事を執筆中。