神奈川県茅ヶ崎市美住町、「茅ヶ崎駅」「辻堂駅」より車で5分ほどのところに所在するアンジェス動物病院。院長の朝岡紀行先生は、ワンちゃんネコちゃんなどの幅広いペットを自ら診療し、ペットと飼い主さんとのコミュニケーションを大事にされている名医です。2023年3月で開院20周年を迎えた朝岡先生の、ペットや治療に対する想いをお伺いしました。
「相手を理解し、心に寄り添う」医療の在り方に出会った
___朝岡先生が獣医を目指されたきっかけをお聞かせください。
朝岡紀行先生私は、神奈川県藤沢市で生まれ育ちました。小さい頃は「動物が好き!」という感じではありませんでした。小学5年生の頃から生き物観察が好きになり、友達との帰り道、ツバメを見て、蜂を追いかけて、巣がどこにあるのか探し回るようなことを毎日のようにしていたら、これまででは知らない世界を感じられるようになりました。
そこから特に野鳥に関心を持つようになり、段々と動物にも興味が出てきたというような感じでしたね。
___生き物観察が朝岡先生のルーツとなっていたんですね!
朝岡紀行先生そうですね。
あともう一つきっかけとして、私には小さい頃から持病がありました。中学時代には大学病院をいくつも回っていたので、段々と医療の世界にも興味を持つようになりました。ただ、大学病院は何というか、病に対して治療を施すという感じで、丁寧に患者の心に寄り添うような医療の在り方ではないと感じました。
そんな中で、一人の鍼灸師の方に出会いました。最初自分の病気について相談した時に「辛かったね」って言ってもらったんです。治る治らないではなく、自分の気持ちに寄り添ってもらえただけで、とても嬉しくて気持ちがスッと軽くなりました。そして自分の中で「これが医療の在り方だ」と強く思いました。
___そんな素敵な出会いがあって、今の朝岡先生があると思うとなんだか感動します。
朝岡紀行先生ありがとうございます。(笑)
そんな出会いがあって、大学は麻布大学に進学し獣医学科を専攻しました。当時は東洋医学に興味を持っていたのですが大学では学ぶことができなかったので、鎌倉の獣医師のところを訪ねて転がり込んだのです。そこで、「まず初めに西洋の現代医学をしっかりと学びなさい」と悟されて、臨床の研究室に進みました。
卒業後は横浜市内の動物病院で5年間の研修を受けて、2003年3月6日、神奈川県茅ヶ崎市にアンジェス動物病院を開業しました。また、独立開業してからメディカルアロマテラピーに出会いました。その面白さから、西洋医学的な現代医学で対応できない部分にどう寄り添えるのかというところに興味を持ち、今の統合医療に繋がるようになりました。
ペットや飼い主さんを現代医療から遠ざけてはならない
___朝岡先生が何か得意とされている治療はございますか?
朝岡紀行先生一口に「得意」と言えるものはないのですが、獣医を目指した当初より統合医療を常に追及してきました。本当に時間をかけて、今でも学び続けているのが統合医療です。
______統合医療はあまり聞き馴染みがないのですが、どんな治療なのですか?
朝岡紀行先生現代医学である西洋医学と代替医療をうまく組み合わせたものが、統合医療です。ですから当院では、漢方薬・鍼灸・メディカルアロマテラピー・ホメオパシー・ホモトキシコロジー・高濃度ビタミンC点滴療法などの代替医療だけで治療するのではない、ということをこだわりとしています。
「現代医学からペットや飼い主さんを遠ざけてはならないこと」、これを自分のポリシーとして日々治療に向き合っています。
______代替医療だけだと良くないんですね。
朝岡紀行先生闇雲に代替医療だけを最初から推奨するのは、本質的ではありません。鍼をやっているから鍼だけで治療する、最初から漢方薬だけを処方するようなことは私はあまりしていません。
また、代替医療を望む飼い主さんは、手術・抗がん剤・ステロイドなどの身体に負担がかかる治療を極端に嫌がる傾向があります。飼い主さんのお気持ちはとても分かります。どの治療も正しく用いれば効果的ではありますが、半面使い方を誤れば体に毒にもなると思います。統合医療としては、このような治療を避けるのではなく、上手に取り入れていくようにしています。
______統合医療は現代医療や代替医療を組み合わせて、本当に必要な治療を行うということなんですね!
朝岡紀行先生そうですね。代替医療を現代医療にいかにうまく取り入れるというかということに意義や魅力を感じているので、本当に最適な方法で治療していくことにこだわっています。
ペットの様子が気になった時に様子を見るという選択はしないで欲しい
______貴院を訪れるペットの症状で多いのものはなんですか?
朝岡紀行先生皮膚病や耳の病気、それから消化器疾患ですね。ただ、この湘南地域だとペットと一緒に寝ているようなペットとの距離が近い飼い主さんが多く、本当に早い段階で当院を訪れてくださいます。ですので、ちょっとした変化に気づいて動物病院にかかってくださるのは、非常に嬉しく思います。
______早い段階で獣医さんに診てもらうことは大事なんですね!
朝岡紀行先生そうです。ちょっとでも異変や変化に気づいたら、すぐに動物病院に連れていくべきだと思います。ペットってなかなか症状に出さないですし、出した頃には既に重症化してしまっていることもあります。
______確かに、ペットの症状に気づくことって難しい気がします。
朝岡紀行先生そうですよね。ですが、毎日一緒に生活している飼い主さんであれば、ちょっとした様子の変化には気づくことができるはずです。
そこで私が伝えたいのは、「ペットの様子が気になった時に、様子を見るという選択をしないで欲しい」ということです。せっかく初期症状に気づいたのに数日様子を見てしまうのはすごくもったいないことですし、何より悪化してしまったら大変なことです。
ですので、お仕事やご家庭の事情はあるかと思いますが、出来るだけ早く獣医師に診てもらうようにしてください。そこでもし何も症状がなくても、安心できます。くれぐれも「たいした病気じゃないのに動物病院に連れて行っちゃいけないんじゃないか」、というメンタルブロックは持たないで、気軽に動物病院を訪れてください。
飼い主さんの幸せがペットの幸せ
___日々ペットと向き合う飼い主さんに何かアドバイスがあれば教えてください。
朝岡紀行先生月並みではあるのですが、一つは爪切りやブラッシング、耳掃除などの日々のお手入れをしっかりとすることです。全て自宅で完璧に行うことは難しいと思いますので、毎日少しずつ、できないところはトリマーさんなどのプロフェッショナルの力をどんどん借りてください。
二つ目は、毎日スキンシップを取ってあげることです。頭を撫でたり顔を触ったりすることは多くても、全身くまなく触ってあげる飼い主さんってなかなかいないんですよね。また、抱っこをした経験がない人も結構いて、抱っこを嫌がるワンちゃん猫ちゃんもいます。
今まで抱っこされていなかった子を急に抱っこをするのは、その子にとってストレスになってしまうので、まずは触ってあげること。子犬子猫ちゃんを飼っている方は、とにかく人の手に慣れさせるようにしてあげてください。
___ペットとはたくさん触れ合うことが大事なんですね!
朝岡紀行先生はい。それが大事なコミュニケーションになり、結果病気の初期症状の早期発見などにつながります。ですので、ご自宅ではグルーミングのようなお手入れと、たくさん触ってあげるスキンシップをぜひやっていただきたいです。
___お手入れに関して、爪切りなどを嫌がってしまうペットにはどうすれば良いですか?
朝岡紀行先生爪切りやシャンプーを嫌がってなかなか自宅ではできない、というお悩みはよくお聞きしますね。やっぱり完璧を求めないことが大切だと思います。爪切りであれば、一気に両手両足の爪を切るのではなく、まずは1本2本から。徐々に慣れさせてあげることが大切です。
シャンプーも一気に全身ではなく頭だけ、お尻だけなど、毎回場所を分けてローテーションしていくとだんだんペットも慣れてきます。ドライヤーの音や風に慣らすのも重要なポイントです。1回のお手入れは5分だけでも良いと考えるようにしてみてください。
___確かにちょっとずつ慣れるようにさせてあげれば、ストレスなくお手入れができそうですね!
朝岡紀行先生はい。後は、お手入れの後に食事や散歩の時間を取るなど、楽しいことをさせてあげるのがおすすめです。ペットが大好きなことの前にやると、「これをすれば楽しいことが待っている」と分かるようになるので、ストレスなく楽しい時間が過ごせると思います。
___ありがとうございます。最後に、朝岡先生から飼い主さんやペットへのメッセージをお聞かせください。
朝岡紀行先生飼い主さんが物心ともに豊かで幸せなことは、ペットの幸せです。本当に飼い主さんとペットって運命共同体で、よく人は鏡だと言うけれど、ペットは飼い主さんの鏡です。
実は飼い主さんはペットを迎えた時から常に何かを求めていて、ペットも飼い主さんの想いに応えようとしているんです。でも、飼い主さんがそれを得られないとストレスになってしまいますし、ペットも応えられないとストレスになってしまいます。
そこで飼い主さんは、ペットだけをコントロールするようなことをしないで欲しい。ペットとの関係が良くなるような方法がないかなと、まずは飼い主さんが出来ることから考えるようにして欲しいです。そして、そんな悩みを相談できる場所に動物病院がなってくれれば良いなと思います。
飼い主さんやペットの個性を尊重し、一緒に幸せを掴めるためのパートナーと思ってもらえるような獣医師で私は在りたいです。そのために今、カウンセリングのための心理学も勉強中です。ペットの治療はもちろんですが、ぜひ日々ペットと向き合う上で生まれるお悩みごとなど、お気軽に相談しにいらしてくださいね。