東京都港区麻布十番にある麻布十番はな歯科。院長の小川綾子先生は訪問歯科を中心に、高齢者向けの歯科治療を提供されています。今回は、小川綾子先生が得意とする治療やクリニックへの想いについて伺いました。
小さい頃一緒に過ごした祖父母の影響で「高齢者歯科学」に関心を持つように
____先生のご経歴を教えてください。
小川綾子2003年に日本歯科大学歯学部を卒業し、 2005年より東京医科歯科大学歯科総合診療部レジデント、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野に入学しました。また、 国立感染症研究所にて虫歯のバイオフィルム抑制物質精製の研究に従事し、2009年に歯学博士号を取得しています。そこから、審美歯科、訪問歯科専門都内歯科医院にて勤務した後、2017年に麻布十番はな歯科を開業しました。
____先生は研究にも注力されていらっしゃいましたが、なぜ高齢者歯科学を専門とされるようになったのですか。
小川綾子大学院在学中には国立感染症研修所で虫歯菌の研究を行い、世界的雑誌「Science」にも取り上げられるなどの成果を上げました。ただ、私は人と関わる仕事が好きで、なかでも高齢者歯科学に強い関心があったんです。というのも私の父は建築家、母は美術雑誌の社長をしており、小さい頃から祖父母の家で過ごすことが多く、高齢の方と接することが好きでした。また、両親の影響で造形美にも興味があったため、審美歯科、訪問歯科を専門とする歯科医院で勤務することを決めました。
____開業された経緯についてもお聞かせください。
小川綾子学生時代から、いつかは開業したいと考えていました。勤務医での経験を経て、自身にとって一番やりがいを感じるのは高齢化歯科学だと感じ、それらを提供できる歯科医院を自分で開業しようと決意。理想とする、ユニットが1台のみの歯科医院が居抜き物件で見つかり、麻布十番で開業することとなりました。
審美での経験を活かし「機能面と美しさ」を兼ね備えた口元へ
____先生がご自身を「◯◯の名医」というとしたら、何の名医だと思いますか?
小川綾子義歯の名医だと考えています。私は学生時代に部分床義歯の科だったため、義歯の治療*1は得意としています。義歯作りの際に意識しているのは、機能性と審美性の両方を追求すること。しっかりとものが噛めること、口を動かせることはもちろん、見た目の美しさにもこだわっています。当院では高齢の患者さんが多いため、昔のお写真を見せていただき、その頃のイメージに近づけることもあります。実際に患者さんからは「若返った」と喜びの声をいただくことも多いです。
また、最近はホワイトニングを求められる患者さんも増えてきました。当院では痛みの少ない薬剤を採用しているため、痛みに弱い方でもご利用いただけます。義歯もホワイトニングも、機能性だけではなく見た目を向上することでQOLを高めることができる施術ですので、患者さんの理想や希望に寄り添いながら進めることを大切にしています。
____診察を行う上で大切にしていること、心がけていることはなんですか?
小川綾子往診の際心がけていることは、今の高齢者はいわゆる団塊の世代。新しいことに興味や関心が強い方が多いと感じます。そのため、いわゆる介護のような診療ではなく、一人ひとりの患者さんにしっかり寄り添い、コミュニケーションをとることを意識しています。
なかには、寝たきりや意識がない患者さんもいらっしゃいます。リアクションが返ってくることは少ないですが、お話ししたり、ときには歌を歌ったりしながら治療することがありますね。私の話が通じているのか、なかにはリアクションしてくださる患者さんもいらっしゃって、心が打たれることもあります。
____綺麗で健康な歯を保つ上で大切なことはなんでしょうか?
小川綾子まずは食生活の改善から始めていただきたいです。特にダラダラ食べや、砂糖の過剰摂取は虫歯の原因になるため、気をつけるべきだと思います。また、歯磨きだけではなくフロスも重要です。毎日歯磨きやフロスで歯の状態を確認し、定期的に歯科医院に通うことで、歯への意識を高めていただければ、健康なお口でお過ごしいただけると思います。
お口、体、そしてその先にある「心」に触れる診療を
____歯科医師として目指す姿を教えてください。
小川綾子当院で掲げているのは「心にタッチする医療」です。2017年に105歳で亡くなられた、日野原重明先生にお話を伺った際、「口だけではなく、その方の口の先にある体、体の先にある心を大切にすれば、歯科医師として外れることはない」というお言葉をいただいたんです。常に患者さんの心と向き合いながら、一人ひとりにあった診療をすることが何より大切だと気付かされましたね。
診療の際には、「どんなものを食べられるようにしたいのか」「どんな毎日を送りたいのか」など患者さんと一緒にゴール設定を行うことを大切にしています。特に高齢になればなるほど、制限は多くなってしまいます。ただ、最近は入れ歯が使えない方でも食べられる嚥下食の開発が進むなど、楽しみの選択肢は増えてきました。幸せの着地点を一緒に考え、その方の持っているポテンシャルを引き出して、QOLを引き上げる、これこそが私たちの使命だと考えています。
____クリニックを選ぶ際に患者さまが重視した方が良いポイントはありますか?
小川綾子もちろん技術や利便性も重要ですが、歯科医師との相性はそれ以上に大切だと思っています。相談しやすい先生や「頑張って歯磨きしようかな」と思える先生、前向きになれるような先生を見つけていただきたいです。
____最後に、患者さまへメッセージをお願いします。
小川綾子歯科医院に対して「怖い」というイメージを持たれる患者さんは多いと思います。まずは検診だけでも良いので、歯科医院に行ってみるというアクションを起こしていただきたいと考えています。
当院はユニット1台のみの完全個室で、全て私が一人で担当しています。その分診られる患者さんの数は少なくなりますが、一人ひとりに対してていねいな診療をしたいという想いからそのような体制をとっています。ご家族で利用することもできますので、ぜひお気軽にお越しください。