生理や妊娠・出産だけでなく、更年期以降の健康管理や加齢による悩みなど、女性特有の身体の変化は人生を通じて多岐にわたります。そんな女性の悩みに寄り添い、地域に根ざした婦人科医療を提供しているのが、千葉県松戸市にある「聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田」院長の八田真理子先生です。幼い頃から医療を身近に感じて育ち、産婦人科医として長年にわたり女性の人生をサポートしています。今回は、八田先生が医師を志した背景やクリニックのコンセプト、そしてGSM( 閉経関連泌尿生殖器症候群)とその治療について、詳しくお話を伺いました。
「地域に根ざしたかかりつけ医」として女性のライフステージをサポート

____先生が医療の道を志したきっかけについて教えていただけますか?
八田真理子先生私の父と叔母が、ともに産婦人科医だったんです。幼い頃から父が婦人科手術を行ったり赤ちゃんを取り上げたりして、患者さまに喜ばれている姿を日常的に目にしていました。そのような環境の中で、自然と「私もいつか同じ仕事をしたい」と思うようになりましたね。小学校の文集を見返すと、その時にはもう「将来は産婦人科医になる」と書いていました。
____現在のクリニックを開業された流れをお聞かせください。
八田真理子先生もともと父が開業したクリニックで、昭和50年からの歴史があり、すでに地域に根ざした産婦人科医療を担っていました。私自身は大学卒業後、大学病院や基幹病院で研修を積み、その後19年間にわたっていまは亡き父と共に開業医として産婦人科全般を診療してきました。2018年に「聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田」と名称を新たに掲げ、現在は婦人科診療をメインに行っています。
____クリニックのコンセプトや大切にしている理念はなんでしょうか。
八田真理子先生「地域に根ざしたかかりつけ医」として、女性のあらゆるライフステージをサポートすることです。思春期から更年期、そして閉経後に至るまで、女性の体は絶えず変化し続けます。それに伴って、月経や妊娠・出産、更年期障害、骨盤底のトラブル、性に関する悩みなど、実にさまざまな問題が起こるんですね。
当院では、そうしたすべての世代の患者さまをできるだけ同じ目線でサポートし、問題があれば一緒に解決を目指したいと考えています。上から目線で「こうすべき」と押し付けるのではなく、患者さまが抱える悩みを丁寧にお聴きすることを大事にしていますね。
更年期以降の女性を悩ませるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の治療に注力

____どのような患者さまが多く来院されますか。
八田真理子先生幅広い年齢層の患者さまが来院されています。思春期から40代くらいの比較的若い世代では、月経痛や生理不順、PMS(月経前症候群)、性行為に関する悩みについての診察が多いですね。子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頸部異形成の患者さんも増えています。
更年期を迎える45〜55歳前後の方は、更年期障害やホルモンバランスの乱れによる体調不良で受診されることが多く、閉経後の方は、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)や排尿トラブル、骨盤臓器脱などのケアを求めて来院されます。
また当院は、以前はお産も扱っていました。そのため母娘2世代、3世代と長年通われている患者さまも多くいらっしゃいます。「妊娠出産が終わったけれど、次は更年期のケアをお願いしたい」など、ライフステージに合わせて一生お付き合いいただける女性ヘルスケアを目指しています。
____先生がとくに注力している治療について教えてください。
八田真理子先生GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の治療に力を入れています。女性は更年期を過ぎると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が大幅に減少します。このエストロゲン不足により、腟や外陰部の萎縮や血流の減少が起こり、乾燥やかゆみ、におい、性交時の痛みや出血、さらには頻尿や尿漏れといった排尿障害が現れることがあります。これらの症状の総称が「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」です。
閉経後のほとんどの女性が何らかの形でこの症状を経験すると考えられています。しかし、多くの方が不調を気のせいだと感じていたり「年齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまったりしているのが現状です。これらのトラブルは生活の質を下げるだけではなく、女性としての自信を失うことにも繋がりかねません。GMSによる不調は治療ができるということを知ってほしいですね。
____GSMには具体的にどのような治療法があるのでしょうか。
八田真理子先生当院では、複数のアプローチを組み合わせた治療を行っています。とくに注力しているのが、モナリザタッチ *1いうレーザー治療と、アンチェア*2という椅子型の磁気治療器です。
モナリザタッチは、CO2炭酸ガスフラクショナルレーザーを腟内や外陰部に照射することで粘膜を活性化し、コラーゲンの生成を促します。レーザーの照射により腟の粘膜がふっくらと再生することで、乾燥やかゆみ、性交時の痛みなどの不快な諸症状の改善が期待できます。
アンチェアは、強力な医療用の磁気を発する椅子型の装置に座ることで骨盤底筋を強力に刺激し、頻尿や尿漏れ、骨盤底筋の衰えをケアする治療法です。痛みやダウンタイムがほとんどなく、着衣のまま施術を受けられるため、継続しやすいのも特徴です。
そのほかにも、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、サプリメントの活用など、患者さま一人ひとりの状態に合わせたトータルな治療プランで、症状の改善を目指しています。
「自分が我慢すればいいから」と諦めず、ぜひ産婦人科の受診を

____先生がカウンセリングで大切にしていることを教えてください。
八田真理子先生とにかく、患者さまのお話をしっかり聴くことですね。婦人科の悩みは、体のことだけでなく、家庭環境や仕事、ライフステージなども深く関わっています。また、更年期以降の女性は自分のケアを後回しにしがちで、心身の不調を我慢してしまうケースも少なくありません。当院では、私だけでなく、看護師や受付スタッフもカウンセリングのスキルを身につけ、患者さまのお話をお聞きできる環境を整えています。患者さまが抱える悩みや生活背景を共有しつつ、より良い治療・ケアにつなげるために、まずはじっくりとお悩みについて伺い、受け止めることを第一にしています。
____最後に、患者さまへメッセージをお願いします。
八田真理子先生女性は10代から生理が始まり、妊娠出産を経て、更年期や閉経を迎えるまで、女性ホルモンの変動に翻弄されていきます。とくに更年期は、人生100年時代においてちょうど人生の折り返しとなる地点です。子どもの独立や親の介護、仕事の責任増大など、環境的にも負荷がかかる時期にホルモンの乱れが加わり、心身ともに不調をきたしやすくなっています。
しかし、女性の守り神である女性ホルモンがなくなった更年期以降も、まだ数十年と人生は続きます。だからこそ、今度はぜひ自分自身に投資してもらいたいと思います。医療は進歩し、予防法や治療法の選択肢も増えています。ホルモン補充療法やレーザー治療など「こんな治療法があるなんて知らなかった」という方も多いので、ぜひ情報をキャッチして、ご自身の不調に困ったときには婦人科をかかりつけ医として利用してみてください。
自分の身体と向き合い、適切なケアをすれば、元気で活動的な生活を長く続けることができます。人の手を借りず自分のことが自分でできる「健康寿命」を延ばして、さらに楽しい人生を送っていただくためにも「受診するほどではないから」「自分が我慢すればいいから」と放置したり諦めたりせず、ぜひ産婦人科にご相談ください。