JR岡山駅からも徒歩圏内にあるみやびウロギネクリニック。近年、日本でも注目が高まっているウロギネコロジーを専門にするクリニックです。 泌尿器科と婦人科の両面から診療を行なっているのは、排尿機能を専門にしている院長の井上雅先生。ウロギネコロジーの必要性や女性特有の”おしもの悩み”についてお話を伺いました。
泌尿器科も婦人科もどちらも診られる医師に
____先生が泌尿器科を目指した理由を教えてください。
井上雅先生泌尿器科は女性医師がとても少なく、私が入局した頃は2%くらいの割合でした。それがむしろメリットだと感じ「女医が少ないからこそ稀有な存在になれるのでは」と思ったのが泌尿器科に決めた理由の一つです。 さらに泌尿器科というのは内科診療から臓器の手術まで行う科。がんになれば抗がん剤治療や放射線治療も行いますし、最初から最後まで患者さまの治療に携わることができます。それも泌尿器科の魅力に感じました。
____クリニックを開院したきっかけを教えてください。
井上雅先生泌尿器科医として女性の患者さんを診ていると、婦人科の疾患が紛れ込んでくることが珍しくありませんでした。婦人科の疾患も診ることができないと治せない病気があると分かり、婦人科で3年間勉強をすることにしました。 知識と経験を積んで、泌尿器科も婦人科もどちらも診られるようになりましたが、それを活かして働ける診療科がなかったんです。当時はまだ泌尿器科か婦人科かどちらかを選ばなければいけない状況でした。「それならば自分で作ろう」と思い立って、みやびウロギネクリニックを開院することにしました。
骨盤底疾患を診るウロギネコロジー
____クリニック名についている「ウロギネ」について教えてください。
井上雅先生泌尿器科(Urologie)と婦人科(Gynecologie)を合わせたものとして、ウロギネコロジーという分野があります。主に女性の骨盤に関連する疾患を専門にしており、欧米では一つの診療科として確立しています。 最近では国内でも大きな病院にウロギネコロジーセンターができることが増えてきましたが、私がクリニックを開院した10年くらい前は全国的にも珍しかったと思います。
____ウロギネコロジーをおすすめするのは、どのような病態ですか?
井上雅先生代表的なケースとしては、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)があります。これは閉経に伴って膣が萎縮したり、筋力が弱ることで頻尿や性交痛、おしもの違和感などさまざまな不調が起こる疾患です。 GSMは婦人科と泌尿器科のどちらの症状も含まれるので、ウロギネコロジーで診るのがいいと思います。 それと、繰り返す膀胱炎も同じです。泌尿器科で薬をもらい、一度は治っても何度も再発する場合は、膣の細菌叢に原因があることが考えられます。こういったケースに関しても、膣の状態が診られるウロギネコロジーの方がおすすめです。
____クリニックに来院する患者さまはどんな悩みが多いですか?
井上雅先生膀胱炎や性病などの感染症も多いですが、年代問わずにおしものヒリヒリ感や違和感を訴える患者さまが多いですね。 GSMの症状が見られる更年期の患者さまだけではなく、若い方でも増えています。ピルを使っているとホルモンが抑えられて、ヒリヒリしたり性交痛になるためです。 このような症状は薬を処方しても、正しいおしものケアを身につけて、根本から解決しないと繰り返すだけなんですよ。
____正しいおしものケアとは何ですか?
井上雅先生みなさん汚れていると思って、ゴシゴシ洗いすぎて悪化していることが多いんですね。おしものケアはお顔のスキンケアと同じイメージ。優しく洗って、シャワーを使うなら水流は弱めに。拭くときも優しく、潤いが足りないと感じる方は保湿剤やオイルなど専用のものでケアしてください。 また、石鹸やベビーソープを使うのは避けましょう。ベビーソープは赤ちゃん用だから優しいと思いがちですがこれは間違いです。赤ちゃんはもともと油分が多く、ベビーソープはその油分を落とすようにできています。お湯で洗うだけでも十分ですが、ソープを使うのであれば、潤い成分や油分が含まれた専用のものがおすすめです。
____思った以上にデリケートなんですね!
井上雅先生そうです。ウォシュレットを使うなら排便時のみ、弱の水流で洗うようにしてください。またオリモノシートは乾燥の原因になるのでおすすめしません。キツいパンツは血流が悪くなって冷えの原因になるので、ゆるゆるパンツがおすすめですよ(笑)。
あらゆる尿失禁の治療に対応
____先生が得意とする治療は何ですか?
井上雅先生私は排尿機能を専門にしているので、あらゆる尿失禁に対応できます。 病態が複雑で、なかなか診断に苦慮する場合は、排尿状態を明らかにできる検査があります。膀胱に何cc溜められるか、どのくらい溜めると内圧が上がってくるかなど、膀胱や尿道の状態を調べることで、どのようなタイプの尿失禁なのかが分かります。 ちなみにこの検査機器を導入しているのは、岡山市内では大学病院と当院くらいで、別の病院から診断と評価をお願いされることもあります。
____尿失禁のタイプによって治療法は変わるのですか?
井上雅先生そうですね。内服薬を使ったり、ウルトラヴェラ*1 というハイフを使った治療、骨盤底筋トレーニングの指導*2 や手術まで一通りの治療法はそろっていると思います。 近々、座っているだけで磁気治療ができる機器も導入しますので、尿失禁の治療の幅がさらに広がります。
____これから力を入れていこうと考えていることはありますか?
井上雅先生性機能を高めるための治療ですね。先ほど尿失禁の治療でもご紹介したウルトラヴェラは性交痛の治療にもおすすめで、膣の締まりが良くなったり潤いもアップしますよ。 他にも骨盤マッサージの方法や内服薬の処方、メンタル面のカウンセリングなども行なっています。 妊娠を成功させるための相談や治療は一般的な婦人科で行えますが、性交渉を成功させるための相談は、ウロギネコロジーの方が向いているかなと感じますね。
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骨盤底筋トレーニングは治療にも予防にも
____エイジングが気になっている女性におすすめのことはありますか?
井上雅先生骨盤底筋トレーニングは本当にやった方がいいですよ。尿失禁で悩んでいる方だけではなく、予防のためにもおすすめです。私自身、出産後の尿もれが本当にひどくて、一生懸命トレーニングをして治しました。 産後の尿もれは高齢出産の方ほど回復が遅いですし、そのまま更年期に突入する方もいます。産後すぐからトレーニングを始めた方が治りも早いですし、その後もずっと続けていけるといいかもしれません。
____具体的にはどのようなトレーニングなんでしょうか?
井上雅先生膣を体の奥に引き込むようなイメージで締めてください。自分の指を膣内に入れてみて、その指を体の奥に吸い込むように締められるといいですね。 今は膣トレという言葉もありますが、あれと同じです。尿もれだけではなく、性交渉の質も上がると思いますよ。
治療には患者さまの努力も大事
____どのような思いで患者さまに向き合っているか教えてください。
井上雅先生快適な生活が送れるように、患者さまに合った治療法を全力で提供したいと思っています。最新の知識を取り入れて、治療の選択肢を増やし、当院にない治療法であれば他院をご紹介します。 ですから患者さまも「治してもらおう」ではなく、「一緒に頑張って治そう」と思っていただけるといいですね。 尿失禁やGSMなどはいわゆるQOL疾患ですから、薬を飲んだり通院するだけではなかなか完治が難しいもの。おしもの正しいケアや骨盤底筋トレーニングを取り入れるなど、患者さまご自身にも努力が必要になってきます。
____本当にその通りですね。
井上雅先生おしものことはなかなか人にも言いづらく、どこかタブー視されがち。でも決して恥ずかしいことではありませんし、治せる病気です。 女優さんが尿もれパッドのCMに出るなど、時代も変わってきていますから、気軽にどんどん相談していただければと思います!
井上先生のご友人医師の紹介
荒木詞奈子先生/しな子レディースクリニック
井上雅先生岡山市中区に所在するしな子レディースクリニック。院長の荒木詞奈子先生。
荒木先生への取材記事はこちら