東京都渋谷区神山町、代々木公園に程近い閑静なエリアに佇む「Care and Cureあきこクリニック」。「身体と心の不調の根本原因にアプローチし、真の健康を取り戻す」ことを目指しています。分子栄養医学、中国医学(鍼灸)、西洋医学、の3つの医学を融合させた独自の治療法で、多くの患者さまをサポートしているのが特徴です。今回は院長の原田明子(はらだあきこ)先生に、そのユニークな医学の道と、分子栄養療法の可能性について、詳しくお話を伺いました。
親族の難病を救った鍼灸から始まり、独自の治療法への道を歩む

____先生が医師になったきっかけはなんでしょうか?
原田明子先生私が医師を意識した最初のきっかけは小学生の頃の親族の病気です。親族は顔面の痛みを伴う病気、三叉神経痛を患っており、発作が起きると寝込んでいました。西洋医学の痛み止めを飲むと胃が痛くなり、神経痛の発作が起きても鎮痛薬も飲めないという辛い状況が続いていました。そんな時、中国から来日した医師の鍼灸治療を受けたところ、数ヶ月で劇的に症状が改善したのです。病院で治らなかった病気が、鍼灸で良くなるという事実に、子どもながらに大変な衝撃を受け、「将来は鍼灸師になりたい」と強く思いました。
その後、医師である父のアドバイスを受け、東京女子医科大学医学部に進学。大学では東洋医学の授業が非常に少なく、当時は循環器内科に興味を持ち、卒業後は循環器専門医として約9年間、臨床に従事しました。しかし、西洋医学的な治療で心臓の病態は改善しても、患者さまが訴える倦怠感や不眠、検査には異常がでない身体の不調はなかなか取りきれず、対症療法に終始してしまうことに疑問を感じるようになっていたのです。循環器内科の仕事は多忙を極め、独学で鍼灸や中国医学の習得をするには限界を感じていたため、台湾の中国医薬大学に5年間留学し、中医学と鍼灸の臨床を深く学び、台湾の中国医学医師免許を取得しました。現地のクリニックでは、他の病院では治らなかった多くの患者さんが、師事した先生の鍼灸治療で快方に向かう姿を目の当たりにし、改めて鍼灸の可能性を確信しました。
____分子栄養医学(オーソモレキュラー栄養療法)にも取り組まれるようになったのはなぜでしょうか?
原田明子先生帰国後、西洋医学と中国医学(鍼灸)を組み合わせた治療を行う中で、多くの方の症状は改善しましたが、それでも効果が出にくい方がいらっしゃいました。その原因を探る中で、「栄養」の問題が大きいのではないかと気づいたのです。現代人は、ストレスや食生活の乱れ、環境要因などから消化吸収能力が低下し、慢性的な栄養不足に陥っている方が非常に多い。それが、身体だけでなく、心の不調、例えばイライラや不眠、さらにはいじめや登校拒否、発達障害のお子さんの心の状態にも関わっている可能性があることを知りました。
そして、分子栄養療法のパイオニアである溝口先生のクリニックを見学。栄養療法によって患者さまが劇的に改善していく姿に再び大きな衝撃を受けました。分子栄養医学と鍼灸治療を組み合わせることで、より根本的な体質改善を目指せるのではないかと考え、現在の治療スタイルを確立しました。
分子栄養療法と鍼灸のシナジーで、不調の根本原因にアプローチ

____クリニックに来院される患者さまに、多いお悩みを教えてください。
原田明子先生本当に様々ですが、例えば女性特有の月経、不妊症、あるいはこれから妊娠を望む方がより良い状態で臨みたい、といったご相談が多いですね。また、職場や学校でのストレス、メンタル不調で日常生活に支障が出ている方、一日中疲れが取れない、アレルギーがある、西洋の薬を使わず身体を治したい、身体や心の問題があるお子さんをお持ちの親御さんからのご相談も増えています。
____分子栄養療法について、詳しく教えていただけますか?
原田明子先生分子栄養療法*1は、身体や心が正常に活動するには、生体内にもともとあるべき「分子(molecule)=栄養素」を、至適濃度に保つ(ortho)ことで、生体機能を向上させ、自然治癒力を高める治療法です。そのため、積極的に必要充分量の栄養素を摂っていただき、身体の不調を快方へと導きます。分子栄養療法は、約70項目以上の詳細な血液検査や尿検査を通じて、個人の栄養状態を分子レベルで解析し、不足している栄養素を特定します。
一般的な健康診断の基準値とは異なり、栄養医学的な観点から最適な栄養状態を目指す治療法です。検査結果に基づいて、医療用サプリメントを用いて必要な栄養素を補給し、同時に専門のカウンセラーが食事指導を行い、食生活の改善をサポートします。最終的な目標は、サプリメントに頼らなくても、日々の食事から必要な栄養素をしっかり摂取し、健康を維持できる身体になることです。しかし、現代人の多くは、さまざまなストレスや、食生活の乱れ、及び食品そのものの変化(食品添加物、農薬、精製食品、大量生産など)により、栄養状態が理想から大きくかけ離れており、食事だけで改善するには非常に長い時間がかかります。ですから、まずはサプリメントで集中的に栄養状態を引き上げ、その間に食生活を見直し、体質改善を図っていくステップが効果的です。
____分子栄養療法に鍼灸治療を組み合わせています。
原田明子先生鍼灸治療には、まず胃腸の働きを整え、消化吸収能力を高める効果があります。これにより、食事やサプリメントから摂取した栄養素を、より効率的に体内に取り込むことができます。また、鍼灸には血流を改善し、全身に栄養素を巡らせる効果もあります。摂取した栄養素が体の隅々まで行き渡ることで、栄養療法の効果をより早く、より高く引き出すことができるのです。また鍼灸治療そのものが身体や心の安定にとても効果が高いため、この二つの治療法は、互いの効果を高め合う、非常に相性の良い組み合わせだと考えています。
____西洋医学との違いは何でしょうか?
原田明子先生西洋医学では、どうしても病気そのものを治すこと、病名診断に基づいた治療が中心となり、原因不明の不調や、検査で異常がないけれど辛い症状、といったものへの対応が難しい場合があります。分子栄養医学や鍼灸を含む東洋医学は、そうした「病気ではないけれど、健康でもない」状態に対して、体全体のバランスを整え、自己治癒力を高めるアプローチをしていきます。諦めていた症状が、視点を変えることで改善する可能性は十分にありますね。
____施術の流れについて教えてください。
原田明子先生まず初診時には、詳細な問診票にご記入いただき、それに基づいて医師が、生活習慣、食事内容、ストレスの状況、過去の病歴など、多岐にわたる情報から、不調の原因を探っていきます。その後、血液検査と尿検査を行います。正確なデータを得るために、血液検査は最後のお食事から8時間以上あけて、空腹の状態で受けていただきます。検査結果が出ましたら、再度ご来院いただき、詳細なデータに基づいて、現在の栄養状態や身体のバランスについて詳しくご説明します。そして、その結果と患者さまの症状、ご希望に合わせて、最適なサプリメントの種類や量、鍼灸治療の頻度や方針などを具体的にご提案します。
同時に、専門の栄養カウンセラーから、日々の食事に関する具体的なアドバイスも受けていただきます。その後は、月に1回程度の通院で、鍼灸治療と、栄養状態の経過を見ながらサプリメント調整、食事指導のフォローアップなどを実施。定期的に血液検査も行い、客観的なデータに基づいて治療効果を確認しながら進めていきます。
病気を診るのではなく、その病気を起こしている患者さまを診る

____クリニックの雰囲気や特徴について教えてください。
原田明子先生患者さまにリラックスして治療を受けていただけるよう、院内にはできる限り自然素材を取り入れています。例えば、壁面に使っているのは生きている苔の「スカンジナビアモス」です。これは空気中の水分を吸って湿度を調整してくれる効果があります。床材なども自然由来のものを意識しています。
また、院内で流れている音響も特別なものです。これは、音響の専門家が長年かけて国内外の大自然の中で録音した、鳥の声や川のせせらぎなどの自然界の音です。人間の可聴域を超えた、動物や虫たちの微細な音まで含まれており、深いリラックス効果と共に、発想力や集中力、コミュニケーション能力を高める効果も期待できると言われています。目を閉じて耳を澄ませていただくと、まるで森の中にいるような感覚になると思います。
____先生が日々の診療で、最も大切にされていることは何でしょうか?
原田明子先生「病気を診るのではなく、その病気を起こしている患者さまそのものを診る」ということです。同じ病名であっても、その原因や背景、症状の現れ方は一人ひとり全く異なります。マニュアル通りの治療ではなく、その方の体質、生活習慣、精神状態、そして人生観まで含めて全体的に捉え、根本的な原因にアプローチすることを常に心がけています。
____最後に、患者さまへメッセージをお願いします。
原田明子先生当院では、分子栄養医学、中国医学(鍼灸)、西洋医学という三つのアプローチを組み合わせることで、従来の治療ではなかなか改善しなかった様々な身体や心の不調に対応しています。「いろいろ検査したけれど異常がないと言われた」「薬を飲んでも症状が変わらない」「どこに行けば治るのか分からない」、そういったお悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。
「体の中で何が起こっているのか」「改善するために何ができるのか」といった、これまでとは違った視点から一緒に考えていきましょう。身体も心も健康で、毎日を笑顔で過ごせるようになるために、私たちができることは、まだたくさんあると信じています。ご興味があれば、ぜひ一度、奥渋谷の当院へお越しください。お待ちしております。