東京都江戸川区にある「江戸川プラスクリニック」。「もう治療の選択肢がないかもしれない」と不安を抱える方々に寄り添い、一人ひとりに合わせた最適な医療をめざすクリニックです。明星智洋(みょうじょう ともひろ)先生は、がん薬物療法専門医・血液専門医として豊富な経験を持ち、「がん精密医療(プレシジョンメディシン)」に取り組んでいます。今回は、医師を志したきっかけや、これからのがん治療への想いを伺いました。
「祖母を苦しめたがんを克服したい」と決意

____先生が医師を目指されたきっかけについて教えていただけますか?
明星智洋先生高校2年生の時、大好きだった祖母が膵臓がんで亡くなったことが、全ての始まりでした。当時はラグビーに明け暮れ、勉強は二の次でしたが、祖母の死をきっかけに「祖母を苦しめた憎きがんを撲滅したい」と強く決意しました。部活中心の生活だったため成績は振るいませんでしたが、進路指導の先生に「医学部は絶対に無理だ」と言われても諦めず、猛勉強の末に医学部に進学しました。祖母が亡くなってから30年以上が経ちますが、あの時の思いは今も私のがん治療の根幹にあります。
____腫瘍を切除する外科医ではなく、血液内科を選ばれたのですね。
明星智洋先生医学部時代も研修医時代も、一貫してがん治療に携わりたいと考えていましたが、元々不器用だったため執刀医には向いていないと感じていました。当時、がんの診断は病理医、手術は外科、抗がん剤治療は内科と、それぞれが分担していました。しかし血液内科は、診断から抗がん剤治療、骨髄移植まで一気通貫で自分自身が行えるため、責任を持って患者さまと向き合える点に魅力を感じ、血液内科を選びました。
____江戸川プラスクリニックを立ち上げた経緯を教えていただけますか?
明星智洋先生標準治療を終え、緩和ケアを勧められたとしても、まだ治療の選択肢が残されている場合があります。そのことを一人でも多くの患者さまに知っていただき、希望を届けたい。そんな思いで、7年前にがん精密医療(プレシジョンメディシン)*1に特化した「江戸川プラスクリニック」を立ち上げました。現在は日本だけでなく海外からも患者さまを受け入れ、日々がん患者さまと向き合っています。
標準治療の限界と、「がん精密医療」という希望の光

____先生ががん精密医療(プレシジョンメディシン)に取り組むようになった経緯を教えてください。
明星智洋先生私が医師を志した頃、がんは「不治の病」とされていました。その後、がん治療は大きく進歩しましたが、抗がん剤は「効くかどうかはやってみないと分からない」という賭けの要素があり、副作用だけが強く出てしまうこともあります。私はその状況に強い疑問を感じていました。 転機となったのは約8年前、慶應義塾大学の西原先生から「遺伝子変異に合った薬を使うアメリカの精密医療が主流になりつつある。一緒に取り組まないか」と声をかけていただいたことです。より確実で副作用の少ない治療につながると確信し、この分野に取り組み始めました。
____がん精密医療とは、どのような治療なのでしょうか?
明星智洋先生まず、がん細胞の遺伝子を詳しく調べ、がんの発生や増殖に関わる「特定の遺伝子変異」を特定します。その変異をピンポイントで狙う分子標的薬を使って治療するのが、がん精密医療です。従来の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えてしまいますが、分子標的薬はがん細胞を効率よく攻撃できるため、副作用が少なく高い効果が期待できます。
____実際にクリニックで治療を受ける場合、どのような流れになりますか?
明星智洋先生当院は完全予約制で、まずカウンセリングにてこれまでの治療歴や現在の状態を伺います。精密医療の適応があると判断した場合、がん細胞の変異を調べる遺伝子検査を行います。検査の結果、効果が期待できる分子標的薬が見つかれば、その薬で治療を開始します。多くは飲み薬で、副作用も少ないため、ご自宅で普段の生活を続けながら治療することができます。また、他院で受けた遺伝子パネル検査の結果を持参いただいても対応可能です。
諦めないがん医療へ。患者さまの心に寄り添い続ける治療とは

____診察を行う上で、先生が最も大切にされていることは何でしょうか?
明星智洋先生患者さま本人とご家族の思いに深く寄り添うことです。がんは身体だけでなく心にも大きな負担を与えます。患者さまの病状や心情を丁寧に汲み取りながら、最善の道を一緒に探していく、それが私の医師としての最も重要な役割だと考えています。
____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。
明星智洋先生がん医療は日々、目覚ましい進歩を遂げています。かつて「不治の病」と恐れられたがんも、今では決して「治らない病気」ではありません。たとえステージ4と診断されても、標準治療の効果が見られなくなっても、諦める必要はありません。 大切なのは、がんを恐れるあまり検診を避けたり、診断から目を背けたりしないことです。私たちは「最後まで諦めないがん医療」をモットーとしています。もし、がんという壁に立ち向かっている方がいるなら、がん精密医療という新たな選択肢があることをお伝えしたいと思います。

