老化治療の名医
乾雅人先生 
銀座アイグラッドクリニック 〜後編〜

東京メトロ・東銀座駅の目の前にある「銀座アイグラッドクリニック」。院長の乾雅人先生は美容皮膚科医として「自然美の追求」を掲げ、国内随一である薬液を活用した「ショートスレッドリフト」の治療を展開しています。そもそも薬液の研究者である先生の最大のテーマは「老化治療」。臓器移植の研究や指定難病の治療も行いながら多方面で活躍しています。
前編に続き、後編では、「ショートスレッドリフト」を中心にお話をお聞きしました。

国内随一、薬液を使った「ショートスレッドリフト」とは

___クリニックのコンセプトである「自然美の追求」とはどのようなものなのでしょうか?

乾雅人先生私の考える「自然美」とは、細胞の活性化によるリアクションによるものなんです。つまり患者である皆さまが本来持っているものを生かし、再生させていくこと。そのために、薬液の研究者として日々細胞とコミュニケーションを取っています。

美容医療では、「物理的な反応」と「化学的な反応」のどちらかに大別されます。当院はできる限り負担感が少ない「化学的な反応」に特化したクリニックです。

物理的な反応は、体の基本構造を変えるものですので、過度に取り組みすぎると美的感覚が狂う恐れがあります。また、ヒアルロン酸の注入を繰り返したり、脂肪吸引や骨切りといったアグレッシブな施術はBefore → Afterがわかりやすいという特徴がありますが、長い年月が経った時にどうなるのかという疑問が残ります。
一方、化学的な反応は負担やリスクも少なく、効果が蓄積して現れます。骨格構造に手を加えることがないので、患者である皆さまの美的感覚を変えることなく「自然美の追求」ができると考えています。

___「自然美の追求」をする上で、特徴的な治療はどのようなものでしょうか?

乾雅人先生フレンチショットとショートスレッドリフト(※下写真)の二つです。
両方とも肌再生、肌育を目的とした施術です。当院は薬液の研究機関として、老化治療薬などを含めた各種の検証を行っており、その一環から生まれた施術です

肌は、表皮、真皮、皮下組織の三層構造です。
このうち、表皮は自然にターンオーバーするのでホームケアなどで対処が可能です。一方で、真皮と皮下組織はターンオーバーによる肌再生が期待できず、医療行為による積極的な介入が必要です。その肌再生、肌育に必要な薬液を、真皮に届けるためにはメソガン(U225)を、皮下組織に届けるためにはショートスレッドリフトを、それぞれ検証、開発したという経緯があります。

___それらの施術で、どのような効果が得られるのでしょうか?

乾雅人先生いずれも、肌本来の組織の増生による、自然な若返りの効果が期待できます。
真皮の層での肌再生では、シミやシワなどの改善に、皮下組織の層での肌再生では、たるみの改善につながっている印象があります。

メソガン(U225)を用いたフレンチショットは、日本人初のライセンスを取得し(※下写真)、フランス本国の本部長が実際に来院して、意見交換を重ねました。その活用法が重要だと思っています。

また、ショートスレッドリフトは、のちに詳しく説明しますが、数年間の検証を経て、嬉しい誤算、肌再生という化学的効果にくわえて、即時的な“たるみ改善”という物理的効果も得られています。固定する場所が限られるロングスレッドよりも自由度が高く、上手く活用すれば、ロングスレッドでは得られない効果も期待できます。一度は試して頂きたい施術の一つです。

___この場合の薬液とはどのようなものでしょうか?

乾雅人先生再生医療で活用される幹細胞と呼ばれる細胞を培養する際の上澄み液、「幹細胞培養上清液」です。幹細胞が具材とするならば、培養上清液はさしずめ、そのエキスが染み出したコンソメスープみたいなものでしょうか。

細胞を活性化させる成分をふんだんに含むのが特徴です。この培養上清液を肌に投与することで、そこに存在する線維芽細胞が活性化します。結果、肌に良いとされるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチン、プロテオグリカンなどがオーガニックに生成されます。
この薬液を、届けるべき組織に応じて、メソガン(U225)を活用したり、直接注入したり、ショートスレッドと一緒に留置したり、など、伝達手段を調整しています。

こうして、体表臓器である皮膚という臓器で検証した結果から洞察を得て、深部臓器での活用の可能性を模索しています。

___「ショートスレッドリフト」と、一般的な長い糸を用いるスレッドリフトとの違いを教えてください。

乾雅人先生「ショートスレッドリフト」は化学的な反応を、長い糸のスレッドリフトは物理的な反応を狙ったものです

そもそも論ですが、長いスレッドリフトと、短いスレッドリフトでは、動く根拠が異なります。施術特性としては、長いスレッドリフトは物理的な効果が期待されています。強い力で引っ張るために、動くかどうかでいうと、動く。しかしながら、その強い力に耐えられる場所でしか固定できません。結果として、同じような顔になったり、固定した部位から引っこ抜けたり、腫れや内出血、開口制限などの副作用やダウンタイムが目立ちます。

一方で、短いショートスレッドリフトの施術特性は、化学反応です。本来は、動く訳がないというのが一般的な医学的常識です。

___それでは、ショートスレッドリフトはどういう効果が目的なのでしょうか?

乾雅人先生例えて言うなら、ピアノやバイオリンの調律・調弦です。

弦楽器の弦には、テンションがかかり続けます。伸びきってしまう前に、先手を打って調律・調弦をすれば、良好な状態をずっと維持できます。これと同じことを、皮下組織の繊維成分に対しても行えばよいのです。当然、繊維の張り替え、化学反応が目的となります。

ですので、診断をした上で、皮下組織に対する化学的効果=ショートスレッドリフトと、皮下組織に対する物理的効果=ロングスレッドリフト、の両方を、賢く使い分けていただくのが、最も理に適っていると思っています。

___さきほど、先生は、ショートスレッドリフトでも物理的効果が得られると説明されてましたが。

乾雅人先生そうなんです。実は、完全に予想外でしたが、過去に施術をした方から 「たるみが改善した」との声を頂戴しました。本来の目的は「たるみの進行予防」ですので、気のせいだろうと思っていました。しかしながら、あまりにも多くの声を頂戴し、また、確かに物理的に動いている症例を複数経験しました。

そこで、本格的に検証を始めました。使用するショートスレッドリフトの種類、配列、順番、深さ、配合薬液、など、各種の検証に検証を重ねて数年。現在に至っています。今では、ある程度の再現性をもって、たるみの進行予防という化学的反応の効果と、たるみの改善という物理的反応の効果の、両方を実現しています

これを説明するために、鹿威し(ししおどし)を例に説明しています。

___どういうことでしょうか?

乾雅人先生旅館や料亭、高級居酒屋などで見かける、竹筒に水滴が溜まり、「カッコーン」と音がするものです。
水滴1滴1滴で、竹筒は動きません。動く訳がない。でも、臨界点を超えると、動く。同じです。ショートスレッドリフト1針1針で、皮下組織は動きません。動く訳がない。でも、臨界点を超えると動きます。臨界点を超えるような、意味のある配列を、術者のディレクションによって生み出しているのです。要は、、、医師の腕でしょうか。

私自身が、外科学総論という特殊な背景を有していることが幸いしたのかもしれません。医療の原理・原則を追求してきた結果、どうも、美容医療業界では希少種なのだと感じています。
今では、東大医学部の同級生や後輩たちと、外科学総論、胸部外科、腹部外科、形成外科、産婦人科、皮膚科、遺伝学、生化学、分子生物学、診断学、統計学などの各種各様の切り口から、あまたの検証を経て、現在の施術に至っています。今もなお、改良に改良を重ねている途中です。

___なんだかすごそうですね。万能な施術な気がしますが。

乾雅人先生そんなことはありません。
施術特性、術者の力量、に加えて、最後にもう一つ、前提条件が重要となります。要は、診断に基づく、患者である皆さまの組織の状態ですね。

臨界点を超えると動く、と話しました。ですので、前提条件が良い方は、簡単に臨界点を超えて、動きます。でも、そうでない方もいらっしゃいます。そういう方は、前段階として仕込みが必要です。
具体的には、動かす皮下組織の量が多い方には、脂肪溶解注射を”適切に”使用したり。エラが張っている方には、エラボトックス注射をして、壁になっている部分を取り除いたり。あるいは、抗がん剤やステロイド製剤を使用している方、日焼け止めを使用されない方、など。組織が脆すぎて、暖簾に腕押しなのです。茶碗蒸しなどに針を刺すようなイメージでしょうか。こういう方にこそ、先ず、皮下組織での化学反応=ショートスレッドリフトを留置して、土台をつくることが重要となります。

このような診断をした上で、ガイドラインに相当する“負担が少ないものからする”というスタンスで、治療にあたっています。

医師の本質を追求しつつ、患者である皆さまに判断力と医療感を提供する

___これまでのお話を伺うと、先生が患者である皆さまに提供しているのは治療だけではないと感じます。

乾雅人先生「自然美の追求」が一番の本質ですが、それを通じて「医療観」を提供するようにしています。

例えば、Apple社がiPhoneを通じてクリエイティブ感を、Nike社がスニーカーを通じてチャレンジングスピリットを、スターバックスがコーヒーを通じて居心地の良さを、提供している様に。
患者である皆さまに、賢い患者になっていただく。その上で、本当に上質な医療体験が初めて実現すると信じています。ですので、医療の原理・原則だけに忠実な、愚直なクリニックであり続けようとしています。
(※下写真は、倫理審査委員会の認定証)

___最後に、今後の展望をお聞かせください。

乾雅人先生老化治療の普及に貢献したいです。
老化治療薬の素晴らしいところは、医療現場でも美容医療現場でも、活用の余地が大きいことです。
また、目の前の患者である皆さまに役立つだけでなく、予防医療の観点、社会保障費の圧縮の観点からも、社会正義だと思うのです。
新規性のある薬液を、機動的に検証することができたら、それは意味があると思います。

少し専門的になりますが、がん細胞とは老化細胞のなれの果てです。ですので、「がんと老化を科学する。」のキャッチコピーは、細胞レベルで老化をとらえると自然に生まれるものなのです。
また、老化を遺伝子レベルでとらえると、指定難病の原因遺伝子なども重要な要素となってきます。やはり「難病と老化を科学する。」というキャッチフレーズにつながっています。

これからも、医療の原理・原則を追求していきます。
そこで得られた知見を、美容医療領域でも、他の医療領域でも、応用していきたいです。
そういう、新しい形の医療機関、医師の在り方を問題提起し、仲間が増えると嬉しいです。

〜前編はこちら〜

老化治療の名医〜前編〜【乾雅人先生/銀座アイグラッドクリニック】

プロフィール
乾雅人先生
銀座アイグラッドクリニック/院長 乾雅人
東大医学部卒。胸部外科を専攻し、大学院では肺移植領域の研究に従事。同時に、財源確保や労働環境など、医療の社会問題化に強い関心をもち、自身が医療業界のプロ経営者になることを決意。2020年、銀座アイグラッドクリニック開業。各種の研究機関や総合病院と提携し、新規性のある薬液の検証を行っている。老化治療薬の一種、5デアザフラビン(TND1128)の臨床研究を世界で初めて実施。

<所属学会>
日本外科学会
日本胸部外科学会
日本呼吸器外科学会
日本再生医療学会
日本抗加齢医学会
日本美容皮膚科学会

問い合わせ:03-6264-7550

治療メニュー等

取材日:2024年4月26日


ライタープロフィール
福島和加子
広告代理店在職中に、経営者や医師、移住者など様々なバックグラウンドを持つ人物への取材を経験。その後フリーランスとなり、「人の生きる姿」を引き出すインタビューライターとして活動中。美容医療業界を中心に、健康に関わるインタビュー記事も多数執筆。