再生医療の名医
武内晋司郎先生 
シンセルクリニック

大阪市中央区西心斎橋、地下鉄御堂筋線「心斎橋」駅から徒歩数分の場所に位置する「シンセルクリニック」。整形外科領域、とくに関節の痛みに特化した再生医療専門クリニックです。院長の武内晋司郎(たけうちしんじろう)先生は、長年、整形外科医として多くの患者さまの診療と手術に携わってきた経験から、手術以外の新たな選択肢として「自己脂肪由来幹細胞治療」を中心に、患者さま一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド治療を提供しています。今回は武内先生に、医師を目指したきっかけや再生医療への思い、そして治療の実際について詳しくお話を伺いました。

スポーツでの怪我から整形外科医へ、そして再生医療の道へ

____先生が医師になったきっかけについて教えていただけますか?

武内晋司郎先生私は高校生の頃、スポーツで怪我をすることが多く、そのたびに整形外科の先生にお世話になっていました。怪我を治してもらう中で、自分も同じように人の体を治す仕事に就きたいと考えるようになりました。スポーツで体を痛めた人を助けたいという気持ちが強くなり、整形外科医を目指したのです。

____整形外科医としてキャリアを積まれる中で、再生医療の道を目指した経緯を教えてください。

武内晋司郎先生整形外科の一般的な治療は、痛み止めの処方や注射、リハビリテーションなどを行い、症状が改善しない場合や重症な場合には手術を検討することです。しかし、長年診療を続ける中で、痛み止めだけでは痛みをコントロールできない患者さまがいることが分かりました。また様々な理由で手術を希望されない、あるいは受けられない患者さまも少なくないという現実にも直面しました。そういった方に対して「何か他にできることはないか?」と模索する中で出会ったのが「再生医療」です。

____そこからクリニック開業までどのような経緯があったのでしょうか?

武内晋司郎先生自身の細胞を用いて組織の修復を目指す幹細胞治療は、手術を回避できる可能性がある新しい選択肢になるだろうと感じました。当時は再生医療自体の認知度が低く、医師や患者さまの間でも、その存在や内容はほとんど知られていませんでした。再生医療は、細胞培養加工施設(CPC)といった専門の設備や厳格な管理体制が必要です。一般の病院でこれらの環境を整え、専門的に行うことはなかなか難しいでしょう。再生医療を、もっと多くの人に知ってもらい、届けたいという思いが強くなり、2023年の10月に再生医療を専門とするクリニックを開業いたしました。

自己脂肪由来幹細胞で関節の痛みにアプローチ

____クリニックに来院される患者さまに、多いお悩みを教えてください。

武内晋司郎先生膝や股関節といった関節の痛みを訴えて来られる方が最も多いですね。長年、痛みに悩まされ、他のクリニックでヒアルロン酸注射や痛み止めの注射を続けてきたものの、だんだん効かなくなってきた方。あるいは、変形性関節症などが進行し、すでに手術を勧められているけれど、できれば手術は避けたい方などが相談に来られます。

注射が効かなくなる理由としては、薬に対する耐性ができてしまうことが考えられます。また関節の変形や炎症が進行し、注射や内服薬だけでは痛みを抑えきれない状態になっている、ということもありますね。

____先生がとくに注力されている治療について、詳しく教えてください。

武内晋司郎先生再生医療の中でも、患者さまご自身の脂肪から採取した幹細胞を用いる「自己脂肪由来幹細胞治療」*1に力を入れています。まず、幹細胞について説明させてください。私たちの体の中には、様々な細胞に変化する能力(多分化能)と、自分自身を複製する能力(自己複製能)を持つ特殊な細胞「幹細胞」が存在します。幹細胞が豊富に含まれているのが脂肪組織です。自己脂肪由来幹細胞治療では、患者さまご自身の腹部などから少量の脂肪を採取・培養し、数を増やします。増えた幹細胞を痛みのある関節などに注射で投与することにより、組織の修復や炎症の抑制を促し、痛みの軽減や機能改善を目指します。

変形性関節症などが進行した場合、最終的には人工関節置換術などの手術が必要になることもあるでしょう。しかし自己脂肪由来幹細胞治療では痛みが改善し、手術をせずに済む、あるいは手術の時期を遅らせることが期待できます。患者さまの細胞を使うため、拒絶反応やアレルギーのリスクが低減するという点も考えられるでしょう。

____治療にあたり、どのような点に気をつけていらっしゃるのでしょうか?

武内晋司郎先生当院では、治療効果を高めるために、投与する幹細胞の「質」と「量」にこだわっています。より多くの幹細胞を投与できるよう、細胞培養の技術を工夫しています。また、細胞を凍結せずに、特殊な保存液を用いて細胞が生き生きとした状態を保ったまま輸送・投与するシステムを採用しています。

____実際に治療を受ける場合、どのような流れになりますか?

武内晋司郎先生初診で詳しくお話を伺い、MRIなどの画像を確認し、治療が適しているかどうかを判断します。適応があると判断した場合、治療計画にご同意いただければ、次に脂肪を採取します。局所麻酔を行い、お腹などから米粒程度の、ごく少量の脂肪を採取。採取した脂肪は、提携している国の認可を受けた細胞培養加工施設(CPC)に送り、そこで幹細胞を抽出・培養します。培養には約4〜6週間かかります。十分に幹細胞が増えたら、いよいよ投与です。 培養された幹細胞を、痛みのある関節内に注射で投与します。投与自体は、外来で比較的短時間で終わります。

____投与後は、すぐに普段通りの生活ができるのでしょうか? リハビリなども必要ですか?

武内晋司郎先生投与当日は、軽い腫れや痛みを感じることがありますが、日常生活に大きな支障はありません。ただし、関節の状態や筋力に合わせて、必要なリハビリプログラムをご提案し、連携している施設をご紹介することもあります。治療効果の確認や状態の変化を見るために、投与後も1ヶ月おきなどに、2〜3回程度、定期的に通院していただくことをお願いしています。

患者に寄り添い、再生医療という選択肢を提示する

____先生が日々の知識や技術を高める上で、普段から行っていることはありますか?

武内晋司郎先生関連する日本整形外科学会や再生医療抗加齢学会などには積極的に参加し、最新の知見を学ぶようにしています。また、国内外の新しい文献を読んだり、他の専門医と情報交換したりすることも欠かせませんね。再生医療は日進月歩の分野ですので、常にアンテナを張って、新しい情報を取り入れるように努めています。

____クリニックの雰囲気や、診療で大切にされていることについて教えてください。

武内晋司郎先生当院は完全予約制で、患者さまお一人おひとりに対して、約1時間の診察時間を確保していますね。まず、これまでの経過や現在のお困りごとなどをじっくりお伺いします。そして、お持ちいただいたMRIやCTなどの画像データを詳細に確認しながら、現在の関節の状態や痛みの原因について、詳しくご説明します。その上で、再生医療が適応となるか、どのような効果が期待できるか、といったことをしっかりお話しさせていただいていますね。患者さまの数は多くても1日に2〜3名程度です。その分、一人ひとりの患者さまとしっかり向き合い、丁寧な診療を提供することを心がけています。

内装については、とくに派手さはありません。清潔感を第一に、患者さまがリラックスして過ごせるような空間作りを意識しています。スタッフも、患者さま一人ひとりの気持ちに寄り添い、丁寧なカウンセリングと対応を目指しています。

____診察を行う上で、最も大切にしていることは何でしょうか?

武内晋司郎先生患者さま一人ひとりにしっかりと寄り添うことです。再生医療は、まだ比較的新しい治療法であり、全ての方に同じ効果が出るとは限りません。だからこそ、画一的な治療ではなく、その方の関節の状態、生活背景、何を一番望んでいらっしゃるのか、といったことを深く理解した上で、適切な治療法を提案することが重要だと考えています。患者さまのお悩みをいかに解決できるか、ということを常に念頭に置いて診療にあたっています。

____最後に、患者さまへメッセージをお願いします。

武内晋司郎先生関節の痛みに対して、手術という選択肢はもちろんありますし、それが必要な場合も多くあります。しかし、手術だけが唯一の道ではありません。「再生医療」という、ご自身の細胞の力を利用して改善を目指すアプローチもある、ということを知っていただきたいのです。

手術はダメ、再生医療が良い、ということではありません。それぞれの治療法にメリット・デメリットがあります。大切なのは、ご自身が納得できる治療法を選択することです。もし、「関節の痛みに悩み、手術を勧められているけれど迷っている」「他の治療でなかなか改善しない」ということであれば、ぜひ一度、当院にご相談ください。

プロフィール
武内晋司郎先生
シンセルクリニック/院長 武内 晋司郎(たけうち しんじろう)

三重大学医学部卒業後、済生会中津病院、淀川キリスト教病院、和泉市立総合医療センター、守口生野記念病院、南港病院などで整形外科医として多くの臨床経験を積む。2023年10月、大阪市中央区に再生医療専門の「シンセルクリニック」を開設。

<所属学会>
・日本整形外科学会
・再生医療抗加齢学会

問い合わせ: 0120-39-4433

治療メニュー等

取材日: 2025年4月22日

*1
◾️施術名:自己脂肪由来幹細胞治療
◾️施術の説明:当院で行っている再生医療の一つが、「自己脂肪由来幹細胞治療」です。脂肪由来の幹細胞は、さまざまな幹細胞の中でも、採取時の身体の負担が少ない、多くの細胞を確保できる、といった特徴があります。自己脂肪由来幹細胞治療では、患者様の身体(脂肪組織)から採取した幹細胞を専用施設で培養し、必要な量まで増やしてから元の身体に戻します。戻すのは患者様本人の細胞のため、拒絶反応やアレルギーが起きにくいと考えられています。
◾️施術のリスク:
皮下血腫、感染症

◾️費用(税込価格)
※下記料金には脂肪採取手技、幹細胞培養、注入の各費用が含まれます。
・関節治療(膝関節・股関節・肩関節) :1,320,000円/ 1部位/1回投与~ ・慢性疼痛(点滴投与):2,200,000円 ~


ライタープロフィール
今崎人実
大手インターネットプロバイダーを経て、Webデザイン事務所に所属。Webデザイナーとして医療専門サイトの構築に携わる。2021年に専業のライターに転身し取材を中心に活動。医師・看護師・放射線治療の研究所などへの取材を得意とし、ライターとして活躍中。