大阪・十三駅から徒歩2分のところにある希咲クリニック。院長を務めるのは山分ネルソン祥興先生です。患者様のことを大切な家族だと思って接しているという山分先生。日本人の価値観を変えるべく啓発活動も積極的に行われています。そんな山分先生の信念について伺いました。
奥さまの出産を機に産婦人科医の道へ
____なぜ産婦人科医になろうと思われたのですか?
山分ネルソン祥興先生最初は、産婦人科はしんどそうだったので絶対嫌だと思っていました(笑)。
ただ、たまたま研修医の時に長男が産まれまして。その時に、自分は医者なのに何もしてあげられなかったんです。妻の痛みが正常なのか異常なのかもわからずあたふたしていたのですが、産婦人科の先生が診てくださるだけですごく安心感があって。
産婦人科医の存在ってすごく大きいなと感じたことから、興味を持ち始めました。
また、産婦人科医はとても大変な仕事であることから、日本では数が足りていません。
人がやりたくないようなことをやって日本に恩返ししたいという気持ちも、産婦人科医になった理由の一つですね。
ネットの情報を鵜呑みにするのは危険
____クリニックに来られるのはどのようなお悩みを持った患者様が多いですか?
山分ネルソン祥興先生1番は生理関係ですかね。あとは、おりものの量や妊娠関連の患者様も多いです。
____生理関連のお悩みには、どのように対処されているのでしょうか。
山分ネルソン祥興先生まずは「それって本当に生理のトラブルなの?」というところから入ります。なぜなら、こういったお悩みには大きな落とし穴が2つあるんです。 まず1つは、膣から出てくる血はすべて生理関連だと思ってしまうこと。不自然なタイミングでの出血だったとしても、量が少ない生理や乱れた生理かなと、何でも生理だと思って片付けてしまう人が多いんです。 さらに、ネットに「生理不順」と入力して調べてしまう。そうすると、大体は「ホルモンバランスの乱れ」「自律神経の乱れ」「子宮の冷え」「更年期」「ストレス」と説明されているんです。これってほとんどの人が当てはまることですよね。自分の原因はコレだと決めつけてしまい、本当の病気を見逃してしまう人が多いんです。
山分ネルソン祥興先生ネットには情報がたくさんあるので、その中から自分の都合のいい情報だけを拾ってしまうことは多いと思います。勝手にストーリーを作り上げて、病気じゃないと思いたいんですよね。 これまでも20代の若い方が子宮頸がんや性病にかかっているケースを何度も見てきました。なのに、自分は大丈夫だと思ってしまう人があまりに多いと感じますね。
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時間をかけて丁寧に説明することで、真に理解してもらいたい
____先生は自身を「〇〇の名医」と言うとしたら何の名医だと思われますか?
山分ネルソン祥興先生説明がわかりやすいとか、患者様に共感できるといった意味で「共感と解説の名医」でしょうか。 日本に来たばかりの頃は日本語が話せなかったし、自分の言うことは誰もわかってくれないのが当たり前だったんです。それがコンプレックスだったからこそ、今でも伝えるためにいろんな工夫をしています。相手に理解してもらうためには、きちんとわかりやすい説明をすることが大切なんです。
山分ネルソン祥興先生私はカウンセリングでかなり丁寧に説明することを心がけているので、患者様を待たせてしまうことも多いのですが、それでも来てよかったと思ってくださる患者様がたくさんいます。待ってでもまた行きたいと思ってもらえるのは嬉しいことですよね。
日本人の意識を変えるため、啓発活動を実施
____素敵ですね。先生は啓発活動も多くされているとのことですが、今後広めて行きたいと思っていることはありますか?
山分ネルソン祥興先生「フェムゾーン」という言葉を広げて行きたいなと思っています。今までみなさんが「デリケートゾーン」と言っていた部分のことなのですが、デリケートっていうとなんだか恥ずかしい感じがしませんか?でも、もう話題に出すことを恥ずかしがるような時代じゃない。フェムゾーンという言い方をすることでより身近に感じられると思うんです。 例えばファッションだと、靴までピカピカにしている人は本当におしゃれな人だと言われますよね。見えないところまできちんとしている人って印象がいいはずです。
山分ネルソン祥興先生それって、フェムゾーンも一緒。私は多くの方のフェムゾーンを見る機会がありますが、それだけで性格がわかるような気がします。
見えないところまできちんとケアしている人は、他の身だしなみや性格もきちんとしています。見えないところまできちんとケアするのが本当のおしゃれ。そういった概念を広めていきたいです。
____あまり意識できていない人、きっと多いですよね。
山分ネルソン祥興先生スキンケアやコスメって、何本でも持っているでしょ?百貨店に行ってもいくらでもあるはず。でも、フェムゾーンのコスメなんて見たことないですよね。デリケートな部分なのに、なんのケアもしていない人が多い。 赤ちゃんが出てくる部分だし、愛する人に見せる場所なのに、ケアしていないのはなぜ?と問いたいですね。
____たしかに、その意識はありませんでした…!
山分ネルソン祥興先生もう一つ力を入れたいのは、日本人女性の価値観を変えることです。そのために毎月イベントを開催していて、コロナ前は200~300人まで集まったこともあります。
健康管理に関して、日本人は特に平和ボケしています。保険証1枚あれば大丈夫だと思ってる。何かあれば病院に行けばいいと思っているけれど、何かあってからでは遅いですよね?
20代のがん患者さんも普通にあり得るのに、その事実に気づいていないんです。
____病気を予防するという観点が欠けているということですね。
山分ネルソン祥興先生例えば、彼氏としか性行為はしていないし、遊んでないから性病にはなっていないと思っている女性はたくさんいます。でも、彼氏が他の誰とも接触していないとは限らないですよね?それに、彼氏の過去についても知らないはずです。
山分ネルソン祥興先生症状がないから大丈夫、何かあったら病院行くから大丈夫だと思っていることでしょう。ただ、多くの性病には症状がなく、あっても気づかないことが多いんです。コンドームをつけているから大丈夫と考える人もいますが、オーラルセックスをしていれば性病がうつる可能性はあります。そういう危機感がない人が多いですね。 外国には1年に何回か定期的に性病検査をする人がたくさんいます。また交際相手が変わる度に性病検査をしておく人もたくさんいます。こういうことはしっかりと伝えていきたいです。
____そういった事実を知ることが、大きな一歩に繋がりますね。
山分ネルソン祥興先生子宮頸がんに関しても同じようなことを思います。国の補助で一部の人が無料で受けられる子宮頸がんのワクチンは、4種類のウイルスをブロックしてくれるものです。ただ、最新のワクチンは9万円ほどするものの、9種類ものウイルスをブロックしてくれます。なのに、国の補助金が出ないからと最新のワクチンを接種しない日本人が多いんです。 子宮頸がんは1日約10人の死亡者そして、年間で1万人ほどの罹患者が出ている病気です。それを知らず、無料のワクチンしか考えない日本人が多いんです。
山分ネルソン祥興先生みんなブランドのバッグには数十万円かけるのに、自分の命を守る9万円のワクチンは打たない。性行為を経験したことがある人すべてに可能性があるのに。この価値観は、変えていきたいなと思っています。
患者様は大切な存在。厳しい言葉をかけてでも命を守りたい
____先生の熱量がすごく感じられました。最後に、患者様に対して抱いている想いを教えてください。
山分ネルソン祥興先生基本的に、患者様は自分の家族や大切な友人だと思って接しています。たまに厳しい言葉を使うこともあるし、「副作用が嫌だ」という患者様に副作用よりも現状の改善を優先しなきゃいけない時は「腹を括らなきゃ!」と伝えることもあります。 業務的な笑顔や業務的な優しさだけを向ければいいというわけではありません。大事な家族だからこそ、厳しい言葉を使うこともあるし、背中を押すこともある。不快な気持ちにさせたら申し訳ないけれど、それがうちのやり方です。 そうして大切な患者様の命を守っていきたいです。