富山県富山市にあるブナの杜歯科クリニックは、「歯並び」や「噛み合わせ」を考えた治療を得意とする歯科医院。ユニークなのは診療科目にアンチエイジング外来を持つ点です。 歯科医師として美容医療にあたる谷口容子先生に、独自の視点や治療への想いについて伺いました。
世の中の美の基準に疑問
____谷口先生が今のお仕事に就いた経緯を教えてください。
谷口容子先生大学の歯学部を卒業後、口腔外科で研修医として働いていた1年目、ある患者さまとの出会いがありました。交通事故にあった20歳の女性です。 顔の外傷が酷かったので形成外科の医師と治療にあたり、幸い一命は取り留めたものの元の顔には戻れない状態。年頃の彼女には到底その現実を受け入れることはできず、心の傷も相当なものでした。 女性の外見が精神へ及ぼす影響とは、これ程にも大きなものなのかと、改めて知った気がします。これが「美容医療」というものに強い関心を持つことになった最初のきっかけでした。
____その中でもエイジングケアに着目したのはなぜですか?
谷口容子先生その後、美容医療の勉強をするためにヨーロッパへ渡りました。そこでお世話になったのがイタリア人の形成外科の先生です。 実は私自身、鼻が低いのがコンプレックスで、ある時彼に相談しました。すると「その鼻になりたくて、ヨーロッパでどれだけの人がお金を払っていると思ってるの?」と。私がコンプレックスに感じていた低い鼻が、海外では美しいとされていたんですね。 日本と海外では「美の基準」が全く違うことを実感しました。 その時から、一般的な美の基準に合わせるように行う美容医療に疑問を持ち始めました。それならばエイジングケアをしっかりとして5年、10年先も自分自身の美しさを保てるようなお手伝いをする方が、よほど人を幸せにできるのではないかと考えるようになったのです。
噛み合わせを考慮した美容医療
____美容医療を歯科医院でやろうと考えたのはどうしてですか?
谷口容子先生ヨーロッパに美容医療を学びに行った時、人体解剖を見させていただきました。そこで先生たちが最初に確認していたのが噛み合わせでした。 私は口腔が専門なので、噛み合わせが顔のバランスに影響することは知っていましたが、日本では美容医療の医師が噛み合わせを診ることはそう多くありません。ところが海外だと、噛み合わせをとても熱心に勉強している医師が多く、それが美容治療に活かされていたのです。
____歯科や口腔外科での知識や経験が、先生が目指す美容医療に活かせると考えたのですね!
谷口容子先生そうですね。例えば右側の噛み合わせが悪いと、そちら側だけほうれい線が深くなったり、たるんで見えたりします。 短期的な美しさを目指すのであれば美容外科手術などの方法もありますが、噛み合わせを考慮した治療をすることで、5年、10年先までの美しさを見据えることができるはず。噛み合わせを専門的に勉強してきたことが役に立つのではないかと思いました。
歯科の診断技術を活かしたボトックス治療
____先生が得意としている施術を教えてください。
谷口容子先生クリニックで最もご要望が多いのは、ボトックス注射*1を使った治療です。 顎や側頭筋には噛み締めるための筋肉があって、噛み締める力に左右差が生じると顔の片側だけたるみやシワが深くなります。この左右差を整えたり、噛み締めを和らげるためにボトックスを使いますが、それには正しい診断が重要になってきます。 私がボトックス治療をする時は、必ず噛み合わせや顎の関節の長さをレントゲンで撮影し、筋肉の左右対称差の程度や動きなどを細かく確認します。顔の筋肉の動きを口の内側から診断することもできるのが歯科医師の強み。このボトックス前の診断技術は、歯科医ならではかなと思います。
_____どのようなお悩みの患者さまが多いですか。
谷口容子先生やはり美容面の悩みから「ボトックス注射を受けたい」とおっしゃる方が多いですね。 でもよくお話を伺うと、肩凝り、首凝り、頭痛が酷いとか睡眠に問題を抱えている方がほとんどです。ボトックスで噛み締めを和らげてあげると凝りや痛みが改善され、睡眠の質も上がって肌もきれいに。見た目だけではなくQOLの改善にもつながります。
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たるみが気になる人は舌の筋トレを
____エイジングが気になる方におすすめのセルフケアを教えてください。
谷口容子先生顎の筋肉はとても凝りやすく、凝ってくるとエラができたりします。そこでおすすめなのがマグネシウム入りのクリームを使ったマッサージ。マグネシウムは筋肉疲労に効果的で、経皮吸収しやすい成分です。下を向きっぱなしで首凝りが酷い歯科衛生士さん達も気に入って使っていますね。 もう一つは舌と表情筋のトレーニング。ベロ回しもいいですが、「あいうべ体操」もおすすめ。大きく口を開けて「あ・い・う・ベー」と最後は舌を思い切り出します。舌の筋力が落ちると顎の下のたるみにつながるので、予防のためにも続けてみるといいですよ。
「リバースエイジング」で今より美しく
____患者さまと向き合う時に大切にしていることはなんですか?
谷口容子先生ボトックス治療でしわやたるみを改善するだけではなく、それが今後できないようにするための方法をお伝えするようにしています。先ほどご紹介したセルフケア方法もそのひとつです。 歯科クリニックということもあって、ご家族皆さんを診させていただくこともあります。患者さまとは色々なお話をしながら治療をしていますね。治療時間よりお喋りの方が長くなることもあるくらい(笑) 私は今「リバースエイジング」というテーマでさまざまな活動をさせていただいています。今は外側からだけではなく、内側からのエイジング治療についても色々とわかってきています。一昔前までは難しかったことが、どんどん可能な時代になってきて、5年後、10年後に今より美しく、今より輝けることも不可能ではありません。 年齢はただの数字でしかない。年齢を重ねるごとに逆戻りをしていくような「リバースエイジング」を患者さまと一緒に実現していきたいと思います。