JR和歌山駅前という好立地にある森女性クリニック。「産婦人科は女性の味方である」、そう断言する森久仁子院長のもとには、和歌山県内はもちろん三重県や大阪府からも多くの方が来院します。プライバシーへも配慮するクリニックでは、患者さま同士が顔を合わせることが少ない動線の確保や、名前ではなく受付番号で患者さまを呼ぶなどの工夫が随所に。今回のインタビューでは、森先生が自由診療で注力している治療やクリニックがめざす姿などについて詳しくお伺いしました。
女性のためのクリニック「森女性クリニック」
___先生が産婦人科の医師をめざしたきっかけを教えてください。
森久仁子先生父も祖父も医師として開業していましたので、幼い頃からその姿を目にしていました。昼夜問わずに訪れる近隣の方を治療し、皆さんから慕われる様子を誇らしく感じていたものです。
医大に進み、腹部の手術を行う医師になりたいと思って消化器外科と産婦人科で悩んだのですが、分娩や不妊、内分泌の研究や悪性腫瘍の除去など幅広い分野で活躍できるということに魅力を感じ、産婦人科医をめざしました。
___先生は、特に不妊治療にも注力されているようですね。
森久仁子先生体外受精を行っていたのは大学で研究していた頃なんですが、それ以降は人工授精などにも力を入れていました。現在でも当院には不妊治療を目的に来院される方が多くいらっしゃいますので、できる限り対応しています。
___平成25年に出身地である和歌山市内で森女性クリニックを開業されていますが、独立は先生の目標だったのでしょうか?
森久仁子先生以前より、大学病院など大きな病院のくくりではなく、自分の裁量だけでやってみたい、私を信頼して来院してくださる患者さまと向き合いたいとの思いを持っていました。
また、総合病院に勤務していた頃は、夜中でも分娩などで呼び出されることが頻繁にあり、子育て中の状況では対応が難しくなりつつありました。ですので、子どもが小学校に入学する時期を目処に、自ら時間配分を融通できる独立に踏み切りました。両親のサポートもあり、ここ和歌山で開業して良かったと思っています。
___クリニックを訪れる患者さまは地元の方が多いのでしょうか?
森久仁子先生当院はJR和歌山駅前にありますので、県の南部や三重県、大阪府内など、ここまで2〜3時間で通える距離にお住まいの方が来院されています。女性のためのクリニックと謳っていますので、長期にわたり受診してくださる方もいます。
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仕方がないと諦めずに「モナリザタッチ」や「アンチェアー」で治療を
___現在、自由診療として力を入れている治療はどのようなものでしょうか?
森久仁子先生「モナリザタッチ」と「アンチェアー」ですね。これらの治療を開始して1年が過ぎましたが、和歌山市内で行っているクリニックが他にないということもあり、希望する患者さまが徐々に増えています。メディアなどで取り上げられることも多く、確実に認知度も広がっているようです。
ただ、外陰部への治療ということもあり、人づてにその効果を耳にし来院する方が多いですね。
___まず「モナリザタッチ」ですが、どのような特徴があるのでしょうか?
森久仁子先生顔のリフトアップやたるみの改善で使用されているレーザー治療器「モナリザタッチ」ですが、この機械の炭酸ガスフラクショナルレーザーによるリジュビネーションの技術を女性器(膣)に応用しています。外陰部に照射することで、外陰部のしわ、たるみ、黒ずみの改善、また、膣のゆるみや性交痛、尿もれが気になる方にも対応できます。
___乳がんの治療を行っている方でも治療を受けられるようですね。
森久仁子先生私はもともと、乳腺の診察や検診を行っていたことから、現在は総合病院と病診連携という形で、乳がんの術後の方や乳がん治療を継続している方の経過観察、薬の処方も行っています。乳がん術後の方には、女性ホルモンの治療をすることができません。このため女性ホルモン減少による外陰部の症状に対する治療ができないということになります。つまり、悩みを抱えているにもかかわらず、「仕方がない」と諦めてしまう方も多いのが実情です。
そこで、外陰部の痛みや出血、また性交渉もできないという状況をなんとか改善したいと思い、女性ホルモン剤を使用しないレーザー治療器である「モナリザタッチ」を導入しました。
___「モナリザタッチ」の効果を教えてください。
森久仁子先生この治療では主に萎縮性膣炎をターゲットにしています。
当院では3回の治療を前提にしていますが、多くの方が、1回の治療でも弾力やハリが出てきた、尿の回数が減った、尿の切れが良くなったなど何らかの変化を感じておられます。患者さまの悩みで最も多い性交痛に関しても、2回3回と治療を進めていくに従って改善を実感していただいています。
___どのくらいの年齢の方が「モナリザタッチ」で治療を受けることが多いのでしょうか?
森久仁子先生40代から50代の方が多いですが、ピルを飲んでいる若い方や乳がんなどでホルモン治療を受けている方もいらっしゃいます。
ただ、当院では「モナリザタッチ」の治療を希望される方の多くがすでに受診している患者さまで、通常の治療にプラスして行う方が主です。自由診療となると、どうしても敷居の高さを感じると思いますが、当院では保険診療も行っていますので、そこに新たな解決ツールが加わったと理解していただいているようです。
___ということは、患者さまとの間に常日頃より何でも話せる信頼関係が欠かせないと感じます。
森久仁子先生おっしゃる通りです。患者さまとの信頼関係はなによりも大切です。
まずはお話をお聞きする。ですが、最初は表面的なことしかお話ししてくださらないこともあります。関係を築きながら、少しずつ掘り下げてお話を聞くことで、プライベートで気になっていることや日常生活で不満を感じていること、性生活にも会話が広がっていきます。保険診療も含め、さらに自由診療も選択できることは当院の強みにもなっていると思います。
___「アンチェアー」に関してはいかがでしょうか?
森久仁子先生これは、高出力電磁パルスによって、骨盤内にある膀胱や直腸や子宮を正しい位置に保ったり、肛門や尿道を緊張・弛緩させ、排泄をコントロールする役割を持つ骨盤底筋をトレーニングする椅子型の機械なんですが、ここ最近では初診から希望される患者さまが増えています。
「アンチェアー」は医療機器ですが比較的安価でエステに行く感覚で治療を受ける方が多いですね。
___「アンチェアー」の効果としてはどのようなものが挙げられますか?
森久仁子先生尿もれや子宮下垂の治療や予防にも効果が見込めますし、中には、腰痛や姿勢の改善を目的にする方もおられます。初めはそれらの効果を期待することが多いんですが、「アンチェアー」の高出力電磁パルスは表面から10cm程内側まで届き、骨盤底筋だけではなくお尻の筋肉や太ももの筋肉などにも鍛えることができ、ヒップアップやお尻のラインがキレイになったと実感する方もおられます。
また、年齢と共に足を一歩踏み出す力が弱くなった高齢者からは、歩きやすくなったという声をお聞きすることもあれば、副産物の多さから継続して治療を受ける患者さまもいらっしゃいます。
女性の味方である産婦人科医として、女性を守り続ける
___クリニックでは、患者さまのプライバシーにかなり配慮されているようですね。
森久仁子先生開業する前から考えていたことで、「私自身がもし診察される側だとしたら」、ということを思い浮かべクリニックの設計を行いました。
具体的には、当院では患者さまのお名前ではなく受付番号でお呼びしたり、また、待合室の入口と出口を別々にし一方通行の動線にすることで、患者さま同士が極力対面しないような工夫も行っています。
まずは、受診しやすい空間でなければ継続も難しいですし、ソフト面に併せてハード面もこだわらないといけないと考えています。
___産婦人科医として、先生が最も心がけていることは何でしょうか?
森久仁子先生 「産婦人科は女性の味方である」ということです。女性を守り、社会進出を後押しできるような存在でありたいですね。例えば月経のトラブルを改善したり、病気の有無にかかわらず女性のQOLを高めていくお手伝いができればと思っています。
ただ実際には、生理休暇の診断書や、職場に時短勤務を申請する母子カードの記入などを希望する方は少なく、社会的には女性への理解がまだまだ浸透していないとも感じています。
___最後に、読者の女性へメッセージをお願いします。
森久仁子先生若い頃から産婦人科を受診する方がいる一方で、年を重ねるほどに受診のハードルが上がり、これまで一度も受診したことがないという方もいらっしゃいます。高齢の患者さまの中には、悩み抜いた末にようやく勇気を出して来院する方もいますが、お話を伺うと何年も前から辛い症状を我慢していたということも。
気になることがあれば、まずは一度受診してみる。産婦人科は女性を守るところ ので、安心して足を運んでいただければと思います。