皮膚科専門医として皮膚科と美容皮膚科の診療を行い「千春皮フ科クリニック」浦和院と広尾院の総院長を務める渡邊千春先生。雑誌やテレビなどメディアへの出演も多く、先生をご存知という方もいらっしゃるはず。今回は、女医として多忙な日々を送りながらも、女性として、母親として、自らの経験をもとに患者さまに常に寄り添う先生に、医師としての信念や、美しさを保つ秘訣などについてお伺いしました。
多忙な女性の肌をサポートし、ヘルスケアに繋げる
___まず先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?
渡邊千春先生もともと私は肌が弱く、幼少時からアトピー性皮膚炎を患っていました。学生になってからも病院に通い続けていたんですが、当時は女性の患者に対する配慮が足りないなと思うことがよくありました。
私自身、なかなか良い医師に巡り会えなかったこともあり、皮膚のことをよく理解した上で同じような悩みを持つ方に寄り添いたいと思い、皮膚科医を志しました。
___その後10年間、皮膚科医を経験された後、美容皮膚科医としてのキャリアもスタートされたようですね。
渡邊千春先生大学病院の皮膚科に勤務していたのは今から30年前のことですので、まだまだ医師の多くが男性で、美容皮膚科医もほとんどいない時代でした。そんな中、女医ということもあり、特に女性の患者さまを診察する機会が多かったんです。私自身が肌のトラブルを抱えていましたし、同じ女性として悩みを共有しやすいという理由があったんだと思います。
そのうちに患者さまから、「シミを取りたい」「ニキビの跡をきれいに治したい」という声も聞かれるようになり、当時病院内で立ち上げたばかりだったレーザー外来に、自ら手を挙げて担当することになりました。その後、ピーリング外来も新設し、美容医療で患者さまの肌が明らかにきれいになっていく様子を何度も目の当たりにしたんです。その経験がきっかけとなり、美容皮膚科の治療にさらに力を入れるようになりました。
___保険診療ではなかなか治療できない部分も、美容医療で対応できると感じたんですね。
渡邊千春先生そうなんです。保険診療はどうしてもリミットがあります。一方、美容医療は、自分が実際に体感したことをすぐに患者さまにシェアできますし、同時に、患者さまが必要とすることに対し、柔軟に対応ができます。なにより、患者さまが喜んでくださる様子が励みになりました。
___美容皮膚科医になったことで、先生ご自身にも変化はありましたか?
渡邊千春先生私は女医であると同時に、4人の子どもの母親です。今では大学生と高校生になりましたが、2人目と3人目は双子で、毎日忙しく過ごしています。その状況でも、肌がきれいだとストレスを感じることがなく、お手入れも楽なんです。普段はほとんどメイクをせずに診察していますしね。(笑)多忙な女性の日常をサポートするという意味でも、美容皮膚科医という仕事にやりがいを感じています。
私もそうだったように、肌がきれいになり自信を持って行動できるようになることは、結果的にヘルスケアにも繋がります。美容医療は、言うなれば健康長寿の一端を担っているとも言えます。女性が美しく明るいと社会全体も明るくなりますよね。
肌のトラブルから美肌まで一貫して治療
___先生のその思いを反映しているのが、2012年に開業した「千春皮フ科クリニック」ということですね。
渡邊千春先生そうですね。皮膚科専門医として皮膚科保険診療と美容皮膚科を診察しています。多い日には100名程の保険診療を行っており、そこから美容診療に繋げることもあります。肌のトラブルから美容医療まで一気通貫して診察できることは、当院の大きな特徴であり、こだわっているところでもありますね。
小さなお子さんから高齢の方まで、幅広い年齢の患者さまが長期にわたって通ってくださるのもそのためです。肌トラブルから美肌治療まで連続して治療できるかかりつけ医としての役割も担っていると感じています。
___幅広い年齢層の患者さまの、あらゆる症状に対応できるということですね。
渡邊千春先生そこは大切にしているところですね。保険診療も、自由診療である美容皮膚科の治療も、新しい知識や効果が期待できる治療を身につけるために、常に学び欠かしません。今できる最善の治療をめざして、皮膚科と美容皮膚科の全体をコーディネートしながら患者さまと向き合っています。
___美容皮膚科ではどのような相談、治療が多いでしょうか?
渡邊千春先生世代によっても異なりますが、ティーンエイジャーに多いのは、ニキビ、ニキビ跡の相談 *1、脱毛 *2ですね。
40代からはシワやたるみの相談が増え、ヒアルロン酸 *3やボトックス *4の治療も増えてきます。最近注目度が増している肌育治療では、保湿効果のあるジュビダームビスタ®ボライトXC注入治療 *5による素地づくりから、さらにアミノ酸などをプラスした肌質改善も行っています。
注入に関して私はアラガン社認定注入指導医(Allergan Medical Institute faculty)(※)をしています。
※(Allergan Medical Institute faculty)
技術向上や情報提供を希望される先生方へご指導し、正しく安全な注入治療の普及に貢献するトレーナー。
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ニキビができたら皮膚科へ!どの程度のニキビで皮膚科に行くべき?
___先生は、「日本プラセンタ医学会」の理事も務めておられるようですね。
渡邊千春先生はい。美肌や疲労回復などさまざまな効果が期待できるプラセンタ療法 *6は私自身も毎週取り入れており、その効果を実感しています。注射は手軽にできるため、患者さまにもとても人気が高く、リピータも多い治療です。女性だけでなく男性にもおすすめです。
また、当クリニックではサプリメント、オリジナルのプラセンタ化粧品などにも力を入れています。
オリジナル化粧品
プラジュネーション
___新たな治療を取り入れる際に気をつけていることはありますか?
渡邊千春先生保険診療の場合にはガイドラインもありますし、臨床試験でエビデンスが明らかな治療のみに絞られますが、美容医療に関しては良くも悪くも玉石混合の状況です。
中には、実際にはコマーシャルされている効果がないものや、リスクが高いものもあります。これを避けるために、まず情報を精査しエビデンスの高い治療法を慎重に選択、クリニックのスタッフも含め自分たちでまずは試して、効果を実感できたものだけを患者さまに提供しています。
美肌と若々しさの鍵は、肌ケアと運動
___先生は50代後半だということですが、肌もきれいでなにより若々しいですね。常日頃から気をつけていることを教えてください。
渡邊千春先生毎日のスキンケアはかかせません。最近では、CLIGRAM(カリグラム)のKOJIBRIGHT(コジブライト)シリーズを愛用しています。メラニンを抑えるコウジ酸と、シミ改善の効果を期待できるレチノールが配合されており、肌に優しいクリームです。併せて肌育治療として、保湿系のボライト注射 *5や、肌の再生を促すプルリアル注射 *7を取り入れています。
それから身体を動かすことですね。まずはできるだけ歩くことを心がけています。浦和院は5階にありますので必ず階段を使用しています。
さらに、週に2回ジムに通い、短時間で効果を実感できる全身型EMSトレーニングを行っています。クリニックでは、骨盤底筋や体幹の筋肉を鍛えることができるトレーニングマシーン、STAR FORMER PRO *8で鍛えています。
___肌にも身体にも良いことを常に取り入れているんですね。一般の方が日常生活でトライしやすいことはなんでしょうか?
渡邊千春先生やはり、日々のスキンケアと運動、食事に睡眠、入浴も重要です。
40~42℃程度の湯船に10分~15分浸かってリラックスすることで、細胞間の情報伝達に作用する化学物質「ケミカルメディエイター」の一つである、細胞の損傷を防ぐタンパク質「ヒートショック・プロテイン」が生成されます。さらに、美肌やむくみ予防にも効果的です。
私くらいの年齢で、今から積極的に取り組むことといえば、やはり運動。ミドルエイジまでは仕事もバリバリこなして身体を動かすこともあるでしょうが、50代に入ると自分で気をつけない限り運動の機会は確実に減ります。
そこで、基本になるのが「歩く」こと。20分以上歩くと代謝が上がりますし、1日の歩数が4,000歩よりも多いか少ないかで、寿命の長さが変わるというデータもあります。私は毎日歩数を確認するようにしていて、4,000歩に届かないと思うときには、あえて電車一駅分を歩いたりもします。
___それは以前から気をつけていたことなんでしょうか?
渡邊千春先生若い頃から、階段があれば利用していましたね。ジムに行かなくても階段を利用したり、一駅分歩いたりしていました。とにかく、子育てと仕事の両立が私の1番の悩みでしたので、何かを取り入れるにしても、スキマ時間でできるということが条件でしたね。
___とはいえ、クリニックを経営しながら、同時に4人のお子さんを育てるのは大変だったと思いますが。
渡邊千春先生日本では、まだまだ女性が子育てをして家事もこなすという考え方が主流ですし、自分がやらなければ引け目を感じてしまうという女性も多いようです。私は実家が県外で両親に頼ることはできませんでしたが、シッターさんの力を借りながら、なんとか乗り切ってきました。その様子を見ていたのか、子どもたちも医学の道を志しているようで嬉しいですね。
年齢とともにウェルエイジングで若々しさを
___先生が患者さまと向き合う上で大切にしていることはなんでしょうか?
渡邊千春先生患者さまのお話をしっかり聞くことです。
それによって患者さまも自身の悩みを明確にすることができますし、どうなりたいかも明確になります。その結果、患者さまに最適な治療のご提案ができます。
___先生は「ウェルエイジング」という言葉をよくお使いになりますね。
渡邊千春先生私はできるだけナチュラルでいたいと思っているんです。どうしても美容医療に囚われすぎると治療が過剰になり、一線を超えてしまうと不自然に見えることもあります。
年齢に敵対するのではなく、年齢を受け入れつつエイジングの坂を緩やかにすることが肝心。70歳でも80歳でも、年齢相応の美しさやエレガントさなど、その方が持つオーラのようなものを輝かせるお手伝いができればと思っています。
「若い」というより「若々しい」という表現がしっくりくるかもしれませんね。実年齢より遥かに若く見せる必要はなく、大切なのは、品や清潔感が伝わってくる美しさを実現することです。美容医療での理想は、明らかな変化というより、周囲から気づかれない程度で少しづつ若々しくなることだと思います。
___その若々しさには、気持ちも影響すると思われますか?
渡邊千春先生もちろんです。何か新しいことにワクワクしながらチャレンジする気持ちも常に持っていたいですね。それから、若い人の話を聞くのも良いですよ。子どもたちからは常に刺激を受けています。
___最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
渡邊千春先生肌は一番ダイレクトに見えるところですので、ちょっとしたトラブルでも心が沈んでしまいがちです。ですがそれだけに、どんなに些細なことでも、状態が良くなれば気持ちも前向きになれます。
家庭の中で女性や母親が明るいと、家族の雰囲気も明るくなるものです。そういう意味からも、肌がきれいなことはとても大切なこと。
子どものためにも家族のためにも、ご自身に自信が持てるような美肌づくりのサポートを続けていきたいですね。どんな悩みでも、ぜひご相談いただければと思います。