神奈川県横浜市磯子区に構える「ロータスクリニック」。院長の松本慈寛(まつもとしげひろ)先生は、北里大学を卒業後、麻酔科医として手術室や救急医療、集中治療室(ICU)の最前線で命と向き合ってこられました。麻酔科医として研鑽を積む一方で、仏教の僧侶としての顔も持つ松本先生。平日には地域医療の現場で診療に当たり、週末にはお寺の仕事に従事するという異色の経歴をお持ちです。医師を志した当初の想いから、臨床現場で直面した忘れられない出来事、そして地域に密着したクリニックでのこだわりまで、お話を伺いました。
「目の前で起きていることに応えたい」——研究への憧れから臨床の世界へ

____先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?
松本慈寛先生私の父が僧侶だったこともあり、最初から医師を目指していたわけではありませんでした。高校生のころ、ちょうどゲノム解析や遺伝子治療の話題が世間を賑わせており、野口英世への憧れも手伝って研究職への道を思い描いていました。進路を父親に相談した際、「研究するにしても、人の身体に直接関われるのは医師だけだ」と助言を受けました。研究者として病気を解明するためにも、まずは医師の免許を取ることが近道だと考え、医学部へと進学したのです。
____大学で学びを進める中で、麻酔科や救急の分野を選んだのはなぜでしょうか?
松本慈寛先生研究に興味があって入学しましたが、実際に大学での顕微鏡を覗き続けるような地道な研究や実習は、正直なところ自分の性分には合いませんでした。そこで早期に臨床へ転向し、治療に対する反応が迅速に返ってくる分野へと興味が移っていったのです。麻酔科の仕事は、一度お薬で患者さんの意識や感覚を極限まで落とし、安全に管理した上で再び覚醒させるという非常に繊細でダイナミックな領域です。行った処置に対して身体がダイレクトに反応する即効性と緊張感に魅力を感じ、麻酔科や救急医療、ICUでの業務に深く没頭していきました。
____医師として活動される中で、僧侶になられた経緯を教えてください。
松本慈寛先生ペインクリニックで研修を行っていた際、末期癌の痛みを抱えた患者さんを担当しました。痛みのコントロールは良好だったのですが、ある日「先生、俺が死んだらどうなるのかな」と尋ねられたのです。その問いに対して、当時の私は満足な言葉を返すことができませんでした。そのときに、人の死や心という大きな問題に真摯に向き合ったことがないことに気が付き、本格的に仏教を学ぶ決意をしました。僧侶となった後は、世界三大苦行などの厳しい修行を経て、患者さんの身体だけでなく、視点を変えて精神的な悩みに寄り添えるようになったかと思います。
____現在の「ロータスクリニック」を開業されたきっかけは何だったのでしょうか?
松本慈寛先生前任の院長先生が高齢となり、後継者を探しておられたことがきっかけでした。当クリニックが入るビルのすぐ裏手に実家のお寺があり、縁あってその診療所をそのまま引き継ぐことになったのです。長年、麻酔や救急といった特殊な現場にいたため、対面での外来診療には当初戸惑いもありました。しかし、お寺の檀家さんや地域の方々が気軽に立ち寄れ、何でも相談できる場所を作りたいという一心で、今日まで診療を続けています。
苦痛を抑える「イボ取り」と、患者さんに寄り添う医療

____クリニックの診療の特徴について教えてください。
松本慈寛先生保険診療では、腰や膝など整形外科の患者さんが多いですね。理学療法士が2人いますので、リハビリテーションはしっかり行っています。皮膚科では、粉瘤やイボなど、ちょっとした外科的な処置にも対応しています。一方、自由診療については、前任の佐野先生が形成外科出身だったので、残していただいた設備をそのまま活かす形で続けています。プラセンタ注射や白玉注射、ニンニク注射といった注射系のメニューが中心で、自由診療全体の8割から9割はそのような患者さんですね。
____シミ・ホクロ・イボ取りについてはいかがでしょうか。
松本慈寛先生レーザーによるシミやホクロ、イボ取りもやっています。もともとは患者さんからの要望があって始めたもので、当院として積極的に打ち出している訳ではなかったんです。それでも、地元で気軽に相談できる場所を求める声は少なくありません。実際に希望されるのは比較的高齢の方が多いです。皮膚の薄い部位だと痛みを感じやすいこともあります。そのため、範囲や部位によっては局所麻酔を使うなど、その方に合わせて対応しています。施術後の経過や仕上がりには個人差があって、赤みなどが一定期間残る場合もありますね。
____レーザーを使ったイボ取りの治療を行っています。
松本慈寛先生当院は液体窒素を置いていないので、イボ取りは基本はレーザーで行います。イボが大きいと、液体窒素の場合は定期的に通院する必要がありますが、レーザーでは1回の処置で終わることが多いですし、跡も残りにくいですね。注射をすることもあり、1回で効果が出ないこともありますが、2・3回で効果が出ることがほとんどです。もちろん結果には個人差がありますし、再発しないとは言い切れませんが、通院の負担をできるだけ減らせる方法を選びたいと思っています。
主観的な訴えにこそ、耳を傾ける

____診察の際に大切にされていることは何でしょうか?
松本慈寛先生患者さんの話を聞くに限りますね。痛みという症状は、患者さん本人にしか分からない主観的なものであって、こちらが客観的に数値化することはできません。だからこそ、訴えをちゃんと聞いてから判断するという姿勢を大切にしています。腰の痛みひとつとっても、レントゲンの所見だけでは判断できない部分がありますので。実際に他のクリニックでは画像検査で異常無しと言われたけど、ずっと痛いという場所に注射を打つと、痛みが改善するということも多く経験しています。そのため、どれだけ痛みと向き合えるかが、信頼関係を築く出発点になると考えています。
____知識をアップデートするために取り組んでいることはありますか?
松本慈寛先生講演会や本での勉強はもちろんですが、最近は医療特化型のAIアプリをよく使っています。膨大な論文の中から必要な情報を効率よく拾い出せるようになって、以前より情報収集にかかる時間はだいぶ短くなりました。ただ、便利になった一方で、たまたま目に入った論文から思わぬ知識を得るような出会いは減ったかなとも感じています。それでも、限られた時間の中で最新の知見を取り入れる姿勢は変わりません。
____最後に、この記事を読む患者さんへメッセージをお願いします。
松本慈寛先生何か困ったことがあれば、まずは話だけでもいらしてください。実際、今まで他院に通院していたけれども、リハビリ目的に通ってくださる方や、口コミをきっかけに来てくださる方も少なくありません。気になるシミやホクロ、なかなか治らないイボなど、小さな悩みでも構いませんので、まずは気軽にご相談ください。



